第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記
第3章 第三章「魑魅魍魎の忘却曲線」
「分かりました...、全てお話ししましょう。しかし、この話を水月ちゃんにするのは良く考えてからにして下さい。」
「お気遣い、ありがとうございます。」
そう、怒りを露わにして言う。苣さんは、軽く息を吐き大きく吸い上げる。
「先ず、その娘は竹華ちゃん事を言っておきましょうか。その霊体です。フィレアさんが、何故見えて触れているかは知りませんが。竹華ちゃんは事故死と言いましたね。あれは作られた嘘です。」
「緑針さんも、嘘を付いているって事ですか?」
苣さんは、頷かず首を振る。
「緑針さんも水月ちゃんも知りません。知っているのは、ほんの一部の人たちだけです。あの日、竹華ちゃんを故意に取り殺させたのです。この娘は、あの存在を制御するのに優れていた。しかし、まだ幼過ぎて度々制御出来ない事があり、あの山から放たれるのです。戻って来た時、あの存在の手には一人の少女が抱え持たれている。」
淡々と、悪事を話す苣さんをを見て、抑えていた怒りが噴き出した。
「...そんな事を理由に、人を殺めて良いと思っているんですか。そうだから、そうしたんですよね。そうならそうと、もう少し早く私たちに相談すれば、竹華ちゃんは死なずに済んだっ。...水月ちゃんが悲しむ事なんて、無かった。心に傷を負う事も...。」
苣さんは、小さく”すみません”と謝り、頭を下げる。
「謝るのは私では無くて、竹華ちゃん本人と緑針さん、水月ちゃんじゃないんですか。子供でも分かりますよ、そんな事。許されるとは思わないで下さいね。人を殺め、欺き続けてきた自身を、贖ったらどうです?私は、空木さんの所に行って来ます。その間に何をすべきか、見つめ直す事ですね。」
そう叱り、怒りに任せて空木さんの所に向かう為に竹華ちゃんを下ろし、翼を出して向かおうとすると、竹華ちゃんは私の服を引っ張った。
「どうしたの?」
後ろを振り向くと、竹華ちゃんは手を差し出している。その手の中には、指輪の付いたネックレスチェーンが二つある。預けていた方を手に取ると、竹華ちゃんはもう一つの自分の方まで、私に握らせた。
「これは竹華ちゃんのじゃないの? ちゃんと持っていないと駄目だよ。大事な物なんでしょう?」
私が、そう言って竹華ちゃんに返しても、私の手に戻した。