第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記
第1章 第一章「乖離的慣性の法則」
暫く歩くと、道の右側に様々な花が繚乱と咲き散る花畑が見えてきた。
「そういえばフィレアさんって、噂通り全身白いんですね。私、最近あの城に入ったばかりなので実際に見たこと無かったんですよね。」
ここに来るまでに無言が続いていたからか、アステルさんは砕けた、少し柔らかい話を持ち掛けてきた。
「冬が好きだからかな、白い服を着てるのは。この服だと安心するし。」
「誰かの贈り物とかですか?」
「うん、メイドさんが...作ってくれた。でも、小さい頃はお姉ちゃんたちに色々な服を無理矢理着せられてたりとかしたけど。」
そう話すと、アステルさんは少し落ち着いたような上向きな表情を見せる。
「何か...良かったです。勝手な想像ですけど、中心世界の人たちは少し難いイメージがありましたから。」
「そう感じさせてしまったなら、すみません。」
アステルさんは、いきなり私の肩を掴んで横に首を振った。突然の事に、私はどう対応すれば良いか判断出来なかった。
「謝らなくて良いんですよっ。遠い遠い存在の人たちって、私たちからしたら何故か少し、関わりも余り無いですし、想像しようにも出来ないですから。」
するとアステルさんは、我に返ったように急に私の肩から手を離して、あたふためきながら頭を何度も下げてくる。私はそれを、宥める事しか出来なかった。
「あっ、折角ですしこの花畑の説明でもしましょうか。」
「うん、お願い。」
アステルさんは、少し気持ちを入れ替える為か、息を吸って整えていた。
「今向かっている村もこの花畑の事も少し話しにくいですが、過去の事件で被害に遭われた人たちの子孫たちが暮らす場所です。子孫って言うと語弊がありますが...。あっそういえば、第零世界も女性しかいないんですよね。」
「何でそれ知ってるんですか...。」
そう言うと、アステルさんは自慢気に答える。
「それなら、私の上司に当たる人が教えてくれましたよ。後は、フィレアさんの事よ。」
「......因みにその人って...誰ですか?」
私は、その耳を疑うくらいの言葉に訊かずにいられなかった。というか確かめたかった。私の頭には二択しかないから。
「これー...言って良いんですかね...。」
「言えない程の人って事ですか?」
「私が言ったって言わないでくださいよ。メグさんですよ、フィシル・メグさんっ。」
その言葉に私は只、苦笑するしかなかった。