第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記
第1章 第一章「乖離的慣性の法則」
外には、すらりと脚の長いメイドさんが、フリルの付いた日傘を差して待っていた。彼女は、私たちに気付くと一礼し、自分の名前がアステル・エトワールだと告げた。
「それでは行きましょうか。村に向かいながら、軽くこの付近を紹介しますね。」
「はい。何回かこの世界にも来てますけど、直接ヴァール城に来てますし、史料で見たくらいしかないのでありがたいです。」
そう言うと、アステルさんは軽く微笑んでから歩き始める。私はそれを追うように足を一歩出そうとすると、自分の上が急に暗くなった事に気付いて足を止めた。犯人は周囲を確認すれば直ぐに分かった。
「この世界は、メレンスより日差しが強いですからね。これで眩しくないですか?」
ミシアちゃんは、私に日が当たらない様に日傘を差していた。
「...ありがと。でも、それじゃミシアちゃんが眩しいでしょっ?」
そう言い、私はミシアちゃんの右腕に手を通して、ぴたりとくっ付く。そして私は、ミシアちゃんの顔を見て微笑してみた。
「そんなにくっ付いていると、歩きにくくなりますよ。」
「そう?でもこれでミシアちゃんも入れたねっ。」
「お嬢様......。も、もうっ行きますよっ。」
ミシアちゃんの白く透き通った頬は、熟れた桃のように色を変えて、それを誤魔化すように強引に歩き始めた。私はそれを見て、少し揶揄って見たくて二の腕に顔を擦ってみた。
「ミシアちゃん照れてるーっ。」
「て、照れてませんよっ。」
「ふふっ、仲がよろしいんですね。」
アステルさんは、私たちを親のような目で見ているのを見ると、私も段々と恥ずかしくなってきて、腕に顔を埋め隠した。ミシアちゃんは、それでも優しく私の頭を撫でてくれる。
「ふふっ、私の後ろに乗りますか?」
「ううん、こうしてたい...かな。」
「そうですかっ。」
そして私たちは、ゆっくりと確実に、村に向かっていった。