第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記
第3章 第三章「魑魅魍魎の忘却曲線」
空を隠すように撓う竹を貫く協調性を失った者は、同調性を失った者を嘲るように晒し、眼尻に乗る涙を煌めかせる。手頃な大きさの平たい岩に座る水月ちゃんは、飛び跳ねる様に降りて、静かに走って来ては跳ねて抱き付く。水月ちゃんが落ち着きを取り戻す事は無く、私は暗く静かに謝る事しか出来ない。空を隠すように撓う竹を貫く協調性を失った者は、同調性を失った者を冷たく晒し、眼尻に乗る涙を煌めかせる。手頃な大きさの平たい岩に座る水月ちゃんは、飛び跳ねる様に降りて、静かに走って来ては跳ねて抱き付く。水月ちゃんが落ち着きを取り戻す事は無く、私は暗く静かに謝る事しか出来ない。でも、どうしてだろう。彼女の気持ちが分からない。この状況で、危険を冒してまで私に付いて行く必要は無い。しかし、考えるだけ、彼女の命を削る取る事になるだけだろう。
「水月ちゃんごめんね。でも...、分かってくれるかな...?水月ちゃんも、何となくでもあのお地蔵さんの意味、分かるよね?」
水月ちゃんが、言葉を発する事は無く。でも、鳥の静かな囀りの中、私のパーカーの裾を引っ張り握り締める。それは、皺の具合を見れば全てが分かる。
「大丈夫。こう見えても、私は強いんだからね。......だから、心配しないで。お姉さんと良い子で待っててくれるかな...?」
そう言うと、腕を締め付ける服が緩く解けていく。水月ちゃんの表情は乱れながらも、優しく私の頬に手を添えた。
「ありがと。...夕食楽しみにしてるからね。」
朗らかに、優しく微笑んで。水月ちゃんのあの感情は、年齢を考えてまだ自分に自信を持てていない、竹華ちゃんを無為に失った遣る瀬無さが混同しているのだろう。助けられなかった自分を責め立て、失ってさらに、その大切さに気付き、心にぽっかり深淵の塗り潰したような闇を、殻の中に入って自傷してきたのだろう。