第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記
第3章 第三章「魑魅魍魎の忘却曲線」
「じゃあ、夜は何が食べたい?」
いざこう訊かれると案外思い付かず、答えにくい。食べたいものを答えて相手を困らせる事もあれば、曖昧に答えると相手を悩ませる事になる。そう考えると、結局私は答えられなくて相手に投げる事が多い。
「水月ちゃんは料理出来るの?それだったら、水月ちゃんの手料理が食べたいな。」
「うん、作れるよ。任せてっ。」
流石に急だからか、水月ちゃんは少し焦っているようだったけど、吹き出しそうな笑いを堪える××さんを静止しようとする水月ちゃんに、少しばかり違和感を覚えた。
「う、うん。」
私は、余り考えずに頷いた。
「じゃあ、私はお母さんに帰って訊いてくるねっ。」
風花ちゃんは、頭を起こして忙しく動き出す。
「一人で帰るの?お昼だからって危ないと思うよ。」
「直ぐそこだから、一人で大丈夫だよ。」
風花ちゃんはこう言うが、地蔵の事を考えるとこの村にも来ないという確証は無い。住職の話なら、あの地蔵は結界、それを破り出た事になる。住職の人は、その結界が破られないようにある程度余裕をもって置いている筈。それでも今回の件のような事が起きたというなら、それは何らかの存在が八尺様に影響している事が言える。住職の、”気休め程度にしかならない”という発言。既に過去に幾度とも破られ、住職も対策をしてきた筈。その何らかの存在が、今よりずっと前から影響していたとするならば、何故誰も気付かないのだろうか。
「風花ちゃん、今はフィレアさんの言う通り一緒に家に帰りなさい。風花ちゃんにとってもその方が良いでしょう?」
緑針さんのお陰で、風花ちゃんは小さく頷いた。緑針さんは、相変わらず私の表情からからでも読み取ったのだろうか。緑針さんは小さい娘と遊んでいるようだから、そういう事には慣れているかも知れないけれど、流石にあからさま過ぎただろうか。
「この村及び、近隣周辺の村に外に外出を控えるように言っておいてもらえますか?」
「はい。昼食は軽い方が良いですよね。」
緑針さんは意図を汲み取ってくれ、話が順々に進む。