第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記
第3章 第三章「魑魅魍魎の忘却曲線」
「...お姉ちゃん?何してるのかなー...?」
水月ちゃんの突進を諸に食らった緑針さんだが、少々ふら付いた程度で倒れる事は無かった。
「水月っ...!?それにフィレアさんまで...何で。」
「あっ本当だぁー、フィレアさん遊ぼーっ。」
××さんと一緒に遊んでいた一人が、私の胸元に飛び込んで来たので、それを優しく抱擁する。誰かと思ったが、顔を見れば宴会の時に来た風花ちゃんだった。風花ちゃんは、小さな腕で私を掴んでは、胸元で頭をもぞもぞと一人動かしていた。
「ごめんね、今日もまだお仕事が終わってないから、遊べそうに無いかな。」
「にゅー......明日は遊べるー?」
水月ちゃんは××さんを叱るのに対し、私は風花ちゃんと全く関係の無い話をする。
「うーん、約束は出来ないかな。この仕事も何時終わるか分からないし。」
そう言うと水月ちゃんは、幼い頬を一杯に膨らませる。しかしその風花ちゃんよりも、時折私の方を見てくる水月ちゃんの方が気になって仕様が無かった。
「風花ちゃんは、お昼は食べたんだよね?」
「うん、お母さんが作ってくれたよ。」
風花ちゃんは、あからさまに気力の無い返事で頭を項垂れて話す。
「それじゃあ、夕方なら遊べそうだけど、どう?その後は一緒にご飯とか。」
「んっ、良いのっ!?帰ってお母さんに頼んでみるっ!」先程までの様子が嘘みたいに、風花ちゃんは素直に喜んでくれているみたいで良かった。フェッセルン山は、トロッケン山に比べ傾斜がきつい訳でも無いし、一人で行って帰って来るだけなら大して時間は掛からない。勿論、道中で何も起こらないとは思えないから、迅速に対処するまでだが。
「............が良いの?」
「...ん、えっあお昼?」
「うん。聞いてなかったでしょ。」
水月ちゃんの話に耳を傾けていなかった私は、今の状況と勘で適当に答えたが合っていた。しかし、話を聞いていなかったのはばれていたみたいで、少し怒っているように見えた。
「うん、ごめんね。風花ちゃんと話してて聞いて無かった。水月ちゃんの食べたいもので良いよ。」
水月ちゃんは、私の返答が不服だったのかじっと見ている。水月ちゃんは、何か不服があるとそうするのだろうか。