第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記
第3章 第三章「魑魅魍魎の忘却曲線」
「留守にしてるって可能性もあるけど、一先ず山内を全部見て回ろっか。」
建物の後ろの草叢の間に隠れるように、舗装された道が確認出来た。何処かに繋がっている事は間違いない。
「うん、そうだね。」
私たちは、先ず草叢を抜ける事にし、砂利道をしっかりと踏み締めて歩く。鬱蒼とした薄暗い道を進み、茂みを抜けるとそこは霊園で、沢山の墓石が幾つも規則的に並べられていた。
「こんな所にもお墓はあるのね。こんな場所に造って不便じゃ無いのかな...。」
「そう?何回も行ってれば慣れると思うし、何よりそこに行けば会えるって考えれば辛くは無いと思うよ。ここじゃあ無いけど、フェッセルン山の方のお寺に竹華のお墓が歩けど、週に数回は行ってるよ。」
水月ちゃんは、気が治まったのか普段の様子で竹華ちゃんの事を話す。正直、もう水月ちゃんの考えている事が分からない。
「だったら、家の庭先にでも造れば良いと思うけど。その方がその人が近くにいるって思えて良いと思うよ。私は。遺骨をアクセサリーにして持ち歩いてる人もいるぐらいなんだから。」
「確かに...。お姉ちゃんに頼んでみようかな。」
水月ちゃんは、不思議と納得しているようだった。先程の水月ちゃんの意見は、一体何処にいってしまったのだろうか。
「おや、客人ですか...珍しい。余り見ない顔ですが、どうされました?」
坊主頭の遠くからでもはっきりと見える皺の深い袈裟を着た嫗。座り込んで、何やら墓の手入れをしていたのだろうか。ゆっくりと立ち上がっては、背中を数回叩きながら背を伸ばす。言動と容姿から、この寺の住職なのだろうと思う。
「外の世界から来たもので、この世界のツェレの空木さんから異変解決の要請がありまして、ここ最近身の回りで何か変わった事はありましたか?どんな些細な事でも良いです。」
嫗は、私たちの方へと向かい来れば口を開く。
「と言うと、中心世界のフィレアさんですか。まだ若いのに若いのに、仕事は大変だろう?私なんて、寺に引き籠っての仕事なのでねぇ。」
そう、住職は陽気に語る。