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第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記

第2章 第二章「深化列車036」


「それで、何があったんですか?」
「...怪異。正確には、猿夢みたいだった...かな。それと、中心地区で起きてる不自然死は、この怪異が何かしら関係しているんだと思う。何とも死体が腐敗が進み過ぎて確認しようが無かったけど。」
二人は真剣な表情になり、私の話をまじまじと聞く。
「猿夢...ですか。...しかし、猿夢があの程度の凄惨な事を出来るとは思えません。それ程、強力で広域に及ぶ怪異でもありませんし。」
確かに緑針さんの言う通りだと、私もそう思った。
「では、猿夢が今回の元凶だと仮定した場合と、そうでない場合を考察しましょうか。」
ミシアちゃんは、猿夢が今回の元凶だと決め付けずに、逆の説も考えている。
「そうだね。ミシアちゃんの言う事からいくと、猿夢の力を増大させる第三者。言い換えると、黒幕がいると。」
「それだと、どちらに踏んだとしても他の第三者であるって事になりますね。」
「緑針さん、思い当たる節などはありますか?」
「はっきりと断言出来ない不確定要素ではありますが、空木の言う通り、先ずはトロッケン山の寺を調べるべきだと思います。」
緑針さんが出したものは、他を闇雲に探すよりも一番賢明な案と言えた。
「...今後も、今回のような災厄が続くと思った方が良さそうですね。」
ミシアちゃんは、小さく溜め息を吐いた。
「明日は、それで行きましょう。」
何故か、二人は私の言葉に頷かなかった。しかし、その理由も直ぐに分かる事になる。
「お嬢様は、熱を治してからですよ。」
「そうですよ。病人に働かせる訳にはいきませんからね。」
二人は、事前に練習したのかという程に息ぴったりに言う。
「うぅ...、分かりました...。」
本当なら一人の私の命より、可能性のある多くの人命を優先したかったが、ミシアちゃんに言われては何も言えなかった。熱ぐらい数日で引くだろう。
「あの緑針さん......、話が全く変わるんですけど、二人だけで話したい事があるので、廊下に出てくれませんか?」
「...わ、分かりました。」
私の唐突な要望に、緑針さんは少し動揺していた。
「じゃあ、私は食器を洗っておきますね。それほど大した量でも無いので、一人で片付けられますよ。」
ミシアちゃんは、空の食器を集めて木製のお盆に載せる。
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