第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記
第2章 第二章「深化列車036」
「...あいつらに攫ってから殺すという頭は無さそうだし、一人で何処かに言ったのかな...。兎も角、早く探さないと。そう遠くは行っていないと思うけど。」
取り敢えず、来た道を戻りながら捜索する事にした。脱出目前で、水月ちゃんが一人で何処かに行く理由...。行くとしても、何かしら私に声を掛ける筈。唯一分かる事は、その猶予さえ与えずに...という事。念の為、銃を構えながら移動する事にした。
ある程度暗闇で活動していた所為か、眼も大分慣れてきた。本当なら眼を使いたいところだが、夢の中だからそれが出来ない。CLEA-PCも使えない。翼も出せない。こんなの、アクションゲームで初期装備のまま戦い続ける等しい。それで無くとも、何かしらの縛りプレイをしているのは確かである。私は、人では無いとはいえ、夢という無防備な場所では、生身の人間と何一つ変わらない。私だと、それ以下とも言える。そう考えると、一層身を引き締めて捜索に当たる。
ここまで特に変化は見られなかったが、階段の所まで戻ってくると、大きな収穫が得られた。誰かが、階段をゆっくりと遅い速度で上がっていく音がはっきりと聞こえた。クラウンの可能性も無いとは言えないので、慎重に進む。
「水月ちゃん、そこにいるのっ?」
声を掛けるが反応は無い。クラウンは視認しない限り、私たちを認識出来ないので、若しクラウンだとしても聞こえていないだろう。
「竹...どうし......るの?...てよ。」
その声は微か、蚊の羽音程のものだったが、確かに水月ちゃんだった。この上に水月ちゃんが確実にいる。私に冷静さなど無くなり、早く階段を上る事だけに集中する。階段の段数も残り十数段というのに、外の明かりが針程も入ってきていない。閉めずに来たから、水月ちゃんが閉めたと考えるのが普通だが、何もする余裕の無かった人が、態々扉を閉めるとは考えにくい。扉を開いて外に出ると、暗い所に長時間い続けた所為か、眼が少し痛くなる。
「見つけた...。外に一人で何しに行くつもり...?」
眼が慣れた頃、外に眼を向ければ水月ちゃん......とクラウンがいた。