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第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記

第2章 第二章「深化列車036」


「そろそろ、やろっか。」
地面に転がしていた兎の着ぐるみの頭を、水月ちゃんにそっと被せた。必死に懐中電灯をつけようと、慣れない着ぐるみで奮闘する水月ちゃんに、笑うのを堪えながら点滅器を押した。水月ちゃんは、お礼の意でだろうか、両手を必死に上下に振りだした。でも、動く度に埃が舞うから、複雑な気分としか言えない。
「よしっ、行って。」
水月ちゃんは、一歩ずつ慎重に機械室を照らしながら前に歩いて行く。その姿が滑稽で、堪えていた笑いも我慢出来なくなった。
「水月ちゃん、そこで止まって良いよ。照らしたままね。」
水月ちゃんは、右手を挙げて返事をした。
「一応、眼閉じてた方が良いよ。閉じたら、手挙げてくれる?」
そう言うと、水月ちゃんは直ぐに手を挙げた。
光の陰に入る様に、水月ちゃんの後ろに走って行く。既に装填はしているので、斧を持つ両手に一発ずつ撃ち込む。クラウンが斧を落としたのを確認してから、直ぐに走って近付き頭を捻った。
「大丈夫、夢だから死にはしないでしょう。」
「終わった...?」
水月ちゃんの相変わらずの姿に、もう何と言ったら良いか分からなくなってきた。
「うん、終わったよ。」
着ぐるみの頭を外すと、水月ちゃんは布を直ぐに外し、余程息苦しかったのか何回も大きく深呼吸していた。
「案外、呆気無かったね。」
順調に進み過ぎているというか、何処か引っ掛かる感じがするが、これで良いのだろう。
外した着ぐるみの頭を、クラウンに被せて漸く終わりを迎えた。
「...!竹華......なの?ん、待って!」
「くっ、鍵掛かってるわね。今度は警備室を探さないといけなくなりそうね。」
機械室の扉の取っ手を捻り引っ張ると、鍵が掛かっていて開かなかった。やはり、そう旨くはいかないみたいだ。
「水月ちゃん、警備室が何処にあるか資料で探してくれない?......水月ちゃん...?」
後ろを振り向いた時には、そこに水月ちゃんの姿は見られなかった。そこに残されたものは、着ぐるみの胴の部分とパーカーの切れ端。
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