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第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記

第2章 第二章「深化列車036」


「ここだけ凄い広いよ。何も無いみたいだけど。」
水月ちゃんは、辺りを隈無く懐中電灯で照らし、観察している。
「ここは、緊急時に来場者が待機させられる場所だね。」
他にも、歩いて行くと衣装が数多く管理されていたであろう、鉄屑に変色した布が散らばる場所。化粧室に、控室、遊園地の地下らしいものが沢山並んでいる。鼻を劈くような黴の臭い。帰っても尚、鼻腔に残りそうな程酷い。
「おっと、懐中電灯消してくれる?」
水月ちゃんが、機械室を照らす前に手を下げさせる。水月ちゃんは、指示通り直ぐに灯りを落とした。私たちは、近くに積まれていた着ぐるみの棚に身を隠した。
「フィ、あの先が機械室だよ。扉の前に立って見張ってるみたいだけど。」
水月ちゃんは、兎の着ぐるみの頭の隙間から顔を覗かせて、機械室の方を見つめている。
しかし、あのクラウンは気付く素振りを見せない。例え、扉に光が当たらなくても、他を照らす光は幾らでも見えた筈だ。
「さぁ、どうやってあれをどかそうか...。」
だから少し、試してみる事にした。
「水月ちゃん、懐中電灯貸してくれる?」
あのクラウンに光を照らし、気付けばこちらまで来る筈だ。私にとって、来ようが来まいが関係無いから、これはかなり好都合だった。
「はいっ、あっ...。」
すると、水月ちゃんは手から懐中電灯を滑らした。落ちた懐中電灯は、転がって行き機械室を諸に照らした。
「まずいっ...、少し移動するよ。」
水月ちゃんの手を引き、その場から少し距離を取ろうとすると、水月ちゃんの手に引っ張り戻された。
「フィ待って、気付かれてないよ。」
水月ちゃんは、機械室の方を確認するようにと、隙間に指を指した。確認すれば、クラウンは何事も無かった様に一点だけを見つめて動かない。
「ふふ...、これなら撃ち殺す必要は無いね。」
「どういう事?」
徐に立ち上がると、水月ちゃんは私の手を軽く引くが、左手を軽く添えて下ろさせた。
「不審な音や光にも気付かない。こうなったら、この夢に連れ込まれた人にしか、気付けない様になってるって考えるしか無いよね。」
懐中電灯の後ろを通る様に近付き、クラウンを照らしたまま拾い上げ、水月ちゃんの元に戻った。
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