第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記
第1章 第一章「乖離的慣性の法則」
段々と声が窄むリア姉を見て、私は優しく頭を撫でて、私自身も少し甘えてみた。すると、リア姉は赤く照る顔を、私の胸に隠すように埋めてくる。その姿にいつもの面影は見られなかった。ある意味、これもいつもの姿なのかも知れない。
「ねぇ...、やっぱり私も...」
「お姉ちゃんにも仕事があるでしょっ。気持ちは嬉しいけど。」
私がそう返すと、リア姉は私を少しずつ強く締め付けてくる。だから私は、こう切り出してみた。
「じゃあたまになら、私の所に来ても良いよ。」
リア姉は非常に分かりやすい反応をする。だって、頭を上げて嬉しそうに目を輝かせていたから。
「...本当?」
「うん。その村の人が許してくれるか分からないけどね。」
私は、抱き付いてくるリア姉を只、宥めていた。これじゃまるで、私がお姉ちゃんみたいだよ。
それから少しの時間が過ぎた頃、メグ姉が私の肩を軽く叩いてきた。メグ姉は”そろそろ行った方が良いんじゃない?”と眼で合図しているように見えた。私はそれに小さく頷き、横から私に抱き付いていたリア姉を、離れてくれるように優しく言った。
「それじゃあミシアちゃん、いつも通りフィの事は宜しくねっ。」
「はい。」
「あっ待って。」
咄嗟に会話を遮った私を、メグ姉は顔を見ただけで理解したようににこやかに話す。
「うん、行って来なさい。」
「ありがと。」
メグ姉に軽く抱擁され、私はミシアちゃんと中庭に向かった。
リビングを出て、中庭に続く長い廊下を歩くと、大理石とガラスに囲まれた中庭に着く。壁や床は白い大理石で出来ていて、一つの石像と慰霊碑を包み込むように草花が繚乱し、ガラスが張られている。中庭に続く数段程の階段を下りて、私は石像の前に静かに立って見上げる。
「今回行く所は第三世界で、不可解な現象が起きてるみたいなんだけど、やっぱり過去にあった事が原因なのかな。でもリゼちゃん。私は大丈夫だから、安心して待っててね。」
「...お嬢様。それでは行きましょうか。」
「うんっ。」