第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記
第2章 第二章「深化列車036」
「ふふっ、無視して無かったんだね。」
再び、周りを警戒しながら慎重に歩を進める。地面は血で赤黒く染まり、元の色が分からない程。一体、何人が犠牲になったのだろうか...。
メリーゴーランド前に近付いてくると良く分かる。直ぐに、水月ちゃんの眼を手で覆う。そこには、ゴミ捨て場のように乱雑に山積みにされた死体の数々。こんなの、見慣れてでもいない限り、吐き戻す事は確実だろう。
「う...、これは流石に酷いわね。ここまで辿り着けた人がここまでいたのね。」
私は、そう言いながらも、彼女たちに何も手を貸す事が出来なかった事に、遣る瀬無さと怒りを覚えた。
「何これ...、動物の体毛かしら。CLEA-PCさえ使えれば、DNA型が合致する動物を探せたんだけど...。」
「でも、こんな所にクラウン以外の動物がいるの?」
私は、あくまで憶測の仮説を立てた。確かに、水月ちゃんの仮説も間違いでは無いかも知れない。鼠の一匹や二匹がこの世界にいたとしても可笑しくは無いだろう。しかし、死体に何も群がっていない事から、それは否定出来そうな気もしたけど。
「さぁ...。若しかしたら、クラウンが何かの動物なのかも知れないわね。」
「先に進もう。」
私は、小さく溜め息を付いて、フードコートに向かった。
元は、緑のレースカーテンに装飾されていたこの三階建ての建物も、この場所では、硝子窓に付いていた筈のものも、地面に叩き付けられ、欠片になる猶予さえ無かったみたいに、小さな輝きも固く遮られている。一階のフードエリアは、微かにその面影が残る程度に。この中で、異形の存在が一暴れしたみたいに、切り付け抉り返したような残痕は、見渡す限り視界から離れようとしなかった。
「何でこんな場所の地下に、態々地下空間を広げたんだろ。」
地面に散らばる、白のテーブルや椅子を掻き分け向かった先。
「これがあれば安心ね。懐中電灯もある。」
こういった店のカウンターには、基本護身用に何かしら身を護れるものが置いてある筈だから。それがあるという保証は何処にも無いけど、第三史書に眼を通しておいて正解だった。
「フィ使えるの?」
水月ちゃんは、かなり慎重にカウンター下の棚にあったハンドガンを手に取る。