• テキストサイズ

第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記

第2章 第二章「深化列車036」


 この遊園地...良く見れば見覚えのあるものだった。あの象徴的な、彩色に施された観覧車。第三世界で、随分昔に廃園になった遊園地に酷似している事が、血に汚れた地図から分かる。
「フィ、ここじゃない?。フードコートの地下にあるみたい。」
水月ちゃんの手には、資料が広げられている。私が、案内図を見ていた十数秒の間に、入退場門の事務室から取ってきたみたいだった。
「お手柄ね。水月ちゃんは、この遊園地知ってる?第三世界創立時に造られた遊園地。今は廃園になって、新しい遊園地に変わったけどね。」
「うん、何回も行った事あるよ。」
記憶を掘り返す時間を与えない程に、早い回答が返ってきた。水月ちゃんにとっては、深く根強く記憶にへばり付いているのだろう。
「じゃあ、道案内は任せても良いかな。それと、ここなら武器も沢山ありそうね。」
界隈を見渡す限り、凶器になりゆるものは幾らでも存在した。それも、ごみのように。
「待って、フィ隠れてっ...。」
水月ちゃんは、声を荒げて身を引く様に手で合図する。
「やっぱり、ここにもいるみたいね。それにこの広さじゃあ、数十人はいそう...。」
少し覗き込めば、鉈を引き摺り歩くクラウンが、そこにはいた。その姿は、生きているのか、ましてや死んでいるかさえ思わせない、不安定な存在に私は見えた。
「よし...いなくなったよ。この道を真っ直ぐ行って、メリーゴーランドの前で右に。」
水月ちゃんは、的確な指示を私に伝える。
「分かった。水月ちゃん、ちゃんと手を繋いでてね。」
「...怖いの?」
状況が違えば、嘲りとも捉えられたその言葉には、親身に寄り添おうとする、水月ちゃんの優しさが垣間見えた。
「それも一理あるわね。ここで死んだらあっちでは心臓発作...。水月ちゃんを置いて、私一人では帰れないわ。それに、水月ちゃんにも夢があるでしょう?」
「うん...、お姉ちゃんみたいに立派な人になって、皆の安全を守れるような人になりたいの。」
水月ちゃんは、自身気にそう話してくれた。そんな立派な夢を、こんな曖昧な場所で終わらせまいと、固く私は決意した。
「うん、とても良い夢ね。それが夢で終わらぬよう、ここから抜け出す事、私が保証するよ。」
「帰ったら、勉強教えてねっ。」
水月ちゃんは、場の空気を少しでも和らげられるように気を使ってくれた。
/ 108ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp