• テキストサイズ

第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記

第2章 第二章「深化列車036」


「えぇ、今のわね。まだまだ沢山いるだろうけどね。」
私は、水月ちゃんを優しく抱えて外に出す。水月ちゃんは、さっきの敵が気になったのか、私の括り付けた所に向かうと、腰が抜けたように倒れ込んだ。
「うっ、ピエロ?」
「いえ、眼の下に涙が無いからクラウンだと思うけど、別にどっちでも良いわね。」
私は、水月ちゃんに手を差し出し立ち上がらせる。
「フィ、早くここから抜け出そっ。」
「うん、私もそう思う。」
「変わり映えのしない列車...。まあ、ここに面白さを求めるのは、どうかと思うけど。」
「うっ、フィこの匂い何...?」
水月ちゃんは、ドアを開けるとともに流れ込む刺激臭に、狼狽え後ろに引く。
「あー...、水月ちゃん、眼を瞑ったままこっちに来てくれる?」
幾度と嗅いだ血の匂いに混じる腐乱臭。幼い水月ちゃんに、事実を伝えるべきではないと即時に判断した。
「...うん。何があるの?」
水月ちゃんは、不思議に感じながらも了解してくれた。
「水月ちゃんも、いずれはなるもの...かな。」
死体の状況を見る限り、一週間前後と言った感じだろうか。死因は......、斧で頭を一発。彼女は、痛みも感じぬまま亡くなったのだろう。これが、怪異である事は間違いない。だけど、それがまだ何かは判断しかねた。
「この夢は、町で起きてる異変に関係ありそう。先に進むよ。」
私は軽く手を合わせ、ゆっくり立ち上がって先頭車両に向かう。
「前が見えないから進めないよぉ...。」
後ろを振り向くと、顔をしっかり手で覆った水月ちゃんは、おろおろしながら私の声の方向に向かって来る。
「はいっ、私に掴まって。まだ、眼を開けちゃ駄目だからね。」
水月ちゃんの手を取り、転ばない様にゆっくり、少しずつ引いて行った。嬉しい事に、扉の先には操縦装置が確認出来た。水月ちゃんの手を離し、手早に座席のシーツを無理矢理剥がす。扉を塞ぎ、侵入を防ぐためだ。少し重たいので、引き摺りながら操縦室に入る。
「おーけー、もう良いよ。目的地到着...と言いたいけど、緊急停止しても乗務員とやらがいる限りは、止めてもあいつらも降りてくることになる。そしたら、死の鬼ごっこが始まるでしょう。」
「でも、方法が無いよ...。」
水月ちゃんの今の表情は、悲観的自我同一性という言葉が良く当てはまる。
/ 108ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp