• テキストサイズ

第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記

第2章 第二章「深化列車036」


「取り敢えず、身を守るための武器が必要だけど、この列車に到底あるとは思えないから...。」
「フィ、これはどう?」
水月ちゃんは、私の上から下りて手すりの所に立ち、一気に力を入れて取り外して見せた。
「鉄棒ね...、錆び付いてて良かった。でも手が汚れそう...今は関係ないけどね。対人戦なら経験豊富だよ。」
「フィ、若し人じゃ無かったら...?」
「あー...、多分大丈夫...と祈りたい。」
「この革も使えそう。待ってっ...誰か前から来る。」
水月ちゃんに、腕を引っ張られ隠れると、前の方の扉が勢い良く開いた。足音からして一人である事は言える。
「敵は一人。水月ちゃん、私が飛び出たら直ぐに私を殺しに来ると思う。あから、少しの間だけ、この中に隠れていて欲しいの。私が迎えに来るまで隠れていて欲しい。」
「何分で戻ってくるの?」
水月ちゃんは不安そうに、私の眼をじっと見てくる。
「一分以内に戻って来る。じゃあ、少しの間だけお別れだね。」
水月ちゃんの額にキスをし、座席の中の荷物収納庫に入らせる。私は、しっかり閉めたのを確認すると、徐々に近づく足音を止めた。
「貴方が乗務員?私には、クラウンにしか見えないわ。」
そこにいたのは、返り血でも浴びたと思われる汚れ方をした斧を持ったクラウンらしき者が立っていた。しかし、彼女は私を認識したからか、斧を振り上げ私目掛けて突っ込んでくる。非常に素人らしい動きだ。錆びれた鉄棒で斧をいなし、背後に回って膝裏を勢い良く蹴り、そのまま全体重を掛けて地面に叩き付ける。
「ふふっ、貴方のその頭は飾りかしら?」
クラウンは必死に抵抗するが、身動きが取れない。
「暫く眠っていて貰うわよ。」
私は、クラウンの頭を一気に力を加減して捻ると、糸が切れたように動かなくなった。クラウンを引き摺って錆びれていない鉄棒の前まで連れて行き、先程水月ちゃんが取った革で、手を手すりに強く括り付けた。
「水月ちゃん、もう大丈夫だよ。」
直ぐに水月ちゃんの元に帰り座席の蓋を外すと、水月ちゃんは小さく丸くなって、私が開けたのにもびっくりしていたみたいだった。
「...終わったの?」
水月ちゃんは我に返ったのか、自分の手の平を見て、首を振る。
/ 108ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp