第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記
第1章 第一章「乖離的慣性の法則」
「でも、若し良いって言われれば、水月ちゃんは初の例になるって事になるね。議会じゃ忖度だって言われそうな気もしないけど。」
「行けると良いな...。」
水月ちゃんは気遣ってか明るく話しているように見えたが、内面は俯きの表情だった。
「ごめんね、少し待った?はいっ、ちゃんと食べてね。」
「ありがとうございます。」
お皿に取り分けてくれた料理を両手でしっかりと受け取る。
「二人だけでどんな話してるのかな?気になるけどお邪魔しちゃ悪いかな。また後でね。」
水月ちゃんは、緑針さんに元気に手を振っている。その表情には、先程の俯いた感じが全くと言って良いほど感じられない。
それから、暫く食事をしていたからか、一時の静寂が流れた。
「フィは、お仕事が趣味って言ってたけど、他に何か好きな事とか無いの?」
その静寂を先に割ったのは水月ちゃんだった。
「趣味かは分からないけど、唯一続けてる事なら詩を書く事かな。小さい頃から良く書いてて。」
「良い詩が書けた時、気持ちいでしょ。」
「うん。周りに読んでくれる人が沢山いる環境だから、書き終えた時の達成感は結構好きだよ。たまに、詩を書いてお互いに見せ合う会とかもやってて、それが私の楽しみかな。」
水月ちゃんは、元の顔色を取り戻しているようだったから、一先ずは安堵の息を付けた。
「私に、今度書き方とか教えてくれると嬉しいな。」
「うん、私で良ければ喜んで。って、言っても特に教えられる事とか無いけどね。自分の感じたものを、自由に天衣無縫の気持ちでそのまま書くだけだからね...。」
そう、苦笑した。
「でも、フィは小さい頃から書いてるんだから、表現とか参考になる所しか無いと思うよ。」
「そう、いられれば一番良いんだけどね。」
食事も一段落し、会話も盛り上がって来た時、後ろの障子が開く音がした。後ろを振り向けば、かなり疲れた様子で、疲労困憊していたミシアちゃんが倒れ込むように座った。
「あの娘たち。あの元気は何処から来るんでしょうか...。若さ故の好奇心から何でしょうかね。」
「あの娘たちと、どんなことして遊んでたの?」
私の素朴な質問に、ミシアちゃんは少し息を整えながら答える。