第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記
第1章 第一章「乖離的慣性の法則」
「水月ちゃんも食べる?」
「うんっ、口移しが良いっ!」
「え...それは流石に駄目かな。」
水月ちゃんは、大きく頬を膨らませて残念そうに私を見てくる。何も気にしないで言ってきているようだから、対応に困る。密着する水月ちゃんの口に魚を運ぶと、美味しそうに味わっていた。
「フィ、お外出ない?少し二人だけでお話ししたいな。」
「良いよ。今行く?」
「うんっ。」
「ご飯、取り分けて持って行くわね。」
「お姉ちゃん、ありがとっ。」
録針さんは、にやけながら水月ちゃんを撫でる。
「ふふっ、可愛いやつめー。」
「へへぇー...。」
水月ちゃんは、嬉しそうにでれている。
「じゃあ、行こっか。」
「うにゅっ。」
水月ちゃんは、私にぴったりとくっ付いて、肩に手を通してしっかりと掴まってくる。それはまるで、抱っこして欲しそうに言っているようで、笑みが零れた。私は、彼女を軽く押さえながら抱えて立ち上がる。やっぱり、身長差があるからか、すっと持ち上がる。私は、水月ちゃんを抱えたまま、障子を開けて縁側に出た。
「ありがとう。もう良いよ。」
それを聞いて、彼女を優しく縁側に足が出るように下ろす。水月ちゃんは、少し足に疲れが溜まっていたからか、脚をぶらぶらと動かしていた。私も、その左側にゆっくりと腰掛けた。
「水月ちゃんって、いつも竹林で一人でいるって聞いたけど、その時何してるの?」
「特に何もしないでぼーっとしてるよ。私、一人でいる方が好きだからかな。さっき私がいた所の近くに少し開けた場所があるんだけど、いつもそこで過ごしてるの。たまに兎さん見掛けるから、その時は兎さんと遊んでるよ。丸くてふわふわした触り心地が好きで。」
「ふふっ、水月ちゃんとは気が合うね。メレンスにも兎さんが沢山いて、たまに城の中に入り込んで来ちゃうんだよね。無理に出そうにも可哀想だから、兎さんが自由に入れるようにしてるの。」
「フィの話聞いてると、メレンスにも行きたくなっちゃった。」
「そう?それも、今度来るお姉ちゃんに頼んでみよっか?多分駄目だと思うけど。一般人が来た例が無いし、余り他世界には干渉して、良い意味でも悪い意味でも影響を受けて欲しく無いからね。」
一時は、私の言葉に水月ちゃんは輝きを持たせていたが、水晶玉が曇ってしまった。