第2章 奉公
転がる石を蹴飛ばして、バタバタ上下に揺れながら馬車は走る。
村をすぎ、野をすぎた。
昼も回り、持たされていたパイを馬車の中で食べた。
橋をひとつと、丘を3つ越えた。
日が傾き始めた。そのころようやく、大きな街が見えてきた。
あれがビタンズの街だ。
フウとため息がこぼれた。
今更ながら、手も震えてくる。
ついに来てしまった、あの…冷徹非道残忍無情な「流血公爵」の元へ。
ガタン、と馬車が揺れた。
窓から外を見ると、いつの間にか街の中心地まで来ていた。
円形の大きな広場がある。
広場の中央にはこれまた円形のスペースがあって、そこには赤く錆びた鋼鉄の、黒い先の尖った棒が、3mも4mも背を伸ばしながら、おおよそ10本ほども、不気味にそびえ立っている。
私はゴクリとツバを飲み込んだ。
この鉄の柱に、何人もの人間が串刺しにされたのだ。
法律を犯したものはもちろん、政策に反対したとか、なんか気に入らなかったとか、あらゆる理由で死刑を言い渡し、鉄棒に死体を刺して晒しものにするという。
うう…。
寒気がしたので、窓から顔をそむけた。
カポカポと馬車は走り続け、3度4度と角を曲がり、しばらくして、ようやく止まった。
いよいよ私は悪魔の住処に辿り着いたらしい。