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ビタンズの惨劇

第9章 終章



〜某月某日、帝都かわら版より〜

9月13日、ズイ公の領地にて惨憺たる事件起こる!

ヤーシュ・ズイ公はさる8月、アイヴァン地方の戦争において華々しい戦功を立てた。その雄々しき姿から「戦神」と称されたこと、我々帝都民の記憶にも新しい。
しかし若き戦神、自領であるビタンズの邸内にて、女使用人に惨殺されたり!

発見された当時の状況については、以下のとおり。

──朝、ズイ公が部屋から出てこられないことを不審に思った使用人長が私室に入った。驚いたことに床は一面の血の海、地獄の様相。その真ん中で、女使用人が、ズイ公の頭部を膝の上に抱きかかえ、何事か呟いていた。
聞くに、
『重い、重い。人1人だけの命であってもこれほどに重い。この人は、一体何人の命を背負って生きたのだろう』
と──

狂気の女使用人は、裁判のためこの帝都へ連行された。
領主殺しの大罪、身をもって償っても余りあり。死罪は免れざること、誰の目にも明らかであった。
裁判の様子を知るものは、彼女の言をこのように伝える。

『誰かが殺さなければいけないと思った。生きていてはいけない人だと思った。誰かが殺すのならば、私がやりたいと思った』

実に悪魔的なり!
奇々怪々たるこたびの事件、「ビタンズの惨劇」として歴史に刻まれるであろう。



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