第7章 懐妊
私と子を成す。それを確かめあった日から、ヤーシュ様が私の体を求める回数は目に見えて増えた。
私もそれが嬉しかった。
「ボクがお前を嫁候補にしていることは、ボクの部下は全員知っている。だが正式に婚姻を結ぶのは子が産まれてからがいいだろう」とヤーシュ様は言った。
私もそれでいいと思う。今の状態でヤーシュ様の妻になっても、多分肩身が狭いだけだ。
ヤーシュ様のお世継ぎを産んだ、となれば、胸を張っていられるだろう。
そんなある日のことだった。
「また戦争、ですか?」
「そうだ」
またヤーシュ様は遠方の戦争に駆り出されるらしい。
どうして自分の領地でもないところの争いに、ヤーシュ様が出向かなければならないのかしら!私は不満に頬を膨らませた。
けれどヤーシュ様には
「ボクは皇帝陛下から土地を頂き治めているだけにすぎない。ボクの身は皇帝陛下のものであり、領民がボクに尽くすように、ボクは皇帝陛下に尽くすのが義務なのだ」とたしなめられた。
私のような田舎の人間からしたら、領主様こそが絶対の支配者だ。皇帝陛下などというのは雲の上すぎてよくわからない。
陛下のおわす帝都はビタンズからはるか遠くだし。陛下どころか都を見る機会も私には一生ないだろう。
それくらい縁遠い存在なのだ。
けれどまあ、ヤーシュ様が義務だと言うのなら仕方ないんだろう。
「戦功を上げれば恩賞が出る。みなの生活も、少しは楽にしてやれるだろう」
ヤーシュ様は真剣な顔でそう言った。