第7章 懐妊
そうなのだ。ここ数年凶作が続き、民間人はひもじい生活を強いられているらしいのだ。
軍を動かすのには莫大なお金がかかるけど、その分たくさんの褒賞が約束されている。
ヤーシュ様はその褒賞で、食料の輸入や公共事業?などをするおつもりなのだ(政治のことは私にはよくわかんない)。
「今回の戦はそれほど難しいものでもないだろう。お前はあまり気にするな」
「はぁい…」
数週間後、ヤーシュ様は軍を引き連れ、館を後にした。
あーあ、心配だなあ。それにヤーシュ様がいらっしゃらないと、彼の専属使用人である私には仕事がないのだ…。
などと暇を嘆いている場合ではなくなった。
ヤーシュ様が出立されてしばらく、私は、懐妊が発覚したのだ。
このことはすぐにヤーシュ様に知らされた。
ヤーシュ様のお喜びは大変なご様子だったそうで、便箋3枚にぎっしりと文字を詰めた手紙を私に送って下さった。
もっとも私は字が読めないので、「この手紙は使用人長に読み聞かせてもらうように」とのことだった。
プライベートなやり取りを他人に知られて恥ずかしい、という気持ちはヤーシュ様にはないみたいだ。でも私はとっても恥ずかしかったので、今度から字の勉強をしようと思った。
だってホラ、領主夫人になるわけだしね。
領主様の手紙には、「愛する領地の未来を担う子供のために、いっそうの気概をもってこの戦争に臨む」と書いてあった。
未来を担うと言うけれど、女の子だったらどうするのかしら。
いやあの方のことだから、女子でも構わんと言うかもしれない。
とにかく、私は有頂天だった。