第4章 家庭
密着する私達の肌。領主様のお顔がやけに近い場所にあった。
「会いたく…ありません。帰りたく、ありません…ぅ」
声が震えたのは、性交のせいということにしておこう。
けれどなぜだろう、涙がポロポロ出てくる。
あそこに私の居場所はなかった。
だから領主様の元へ奉公にという話が出た時、あっさり受け入れてしまったのかもしれない。
「う…イヤ…。帰りたくない…ヒッグ…かぇりたくない…」
ついに私はすすり泣いてしまった。
あの家ではろくに泣きもしなかったっけ。弱みを見せるのが悔しかったから。
領主様も、私が突然泣き出して呆れているかもしれない。
止まれ、涙。
そんなことを思っていたら、頭に温かいものを感じた。
「そうか。ペシェは帰りたくないのだな」
あ…これ、撫でられてる。
「それならそれでいい。一生ボクの所にいろ。ここがお前の家だ」
領主様の声はいつもどおり淡々としていた。
けれど…なんでだろう。おかしいなあ。
どうしてこんなに、やわらかく聞こえるんだろう。
おかしいなあ。
「わ、たし…は、グス。おそれおおい、です。ただの、使用人…ですから…」
「ただの使用人?まあ、身分上はそうだ。だがいずれここがお前の本当の家になる」