第9章 番外編
「ねぇ、貴方船長さんなんでしょう?今夜私の事、買わない?」
「狡いわ、私の方が船長さんの事満足してあげられると思うけど…?」
女達は細い指先でトラファルガーの腕や背にまとわりついた。その光景には呆気に取られ、彼を見た。しかしトラファルガーはと視線が合うものの、特に女達を振り払う事もなく憮然として酒を仰った。
「…あ……。」
触らないで、近付かないで。
そう思っても言葉が出ない。止める事が出来ない。はその光景から目を逸らし、1歩後退りした後店の外へと飛び出した。
そのまま大きな翼を羽ばたかせ、ポーラタンク号へと向かう。どうしていいか分からなかった。トラファルガーが何を考えているのか分からなかった。ただ、感じたことの無い心のモヤモヤに頭が混乱し逃げる事しか出来なかった。
船に戻ると甲板にベポとペンギンが居る。船を完全に空けることは出来なかったので、残っていてくれたらしい。彼らは空から突如飛んで来たに驚いた。
「ベポ〜〜!」
「うわっ、どうしたの!?キャプテン達と一緒じゃないの?」
「…良いんです!私はこっちが良い。」
大きな身体にしがみつく様に抱き着いてきたの頭をベポの柔らかな肉球が撫でた。ペンギンは彼女の予想外の行動に肩を竦める。ベポも何が起こったのかが理解出来ずに目をぱちくりさせた。
「…まぁ、ここがいいなら居れば良いだろ。も飲むか?酒。」
「…いただきます。」
「よし、飲み直すか。」
小さなグラスにお酒を注ぎ、とペンギンはお酒を、ベポはジュースを持って円を作るように座って3人は杯を合わせた。はお酒を1口飲み下し、唇を尖らせる。
「…ローが女の人に囲まれてたんです。」
「あぁ、いつもの事だな。」
「キャプテンモテるからね。」
「うぅ……分かってるけど、胸が痛くなって、怖くて、逃げてしまったんです。取られちゃう、怖いと思って。」
「嫉妬か?お前も随分キャプテンに惚れ込んでいるな。」
「…そうですね。」
「そう言えば、って元々人を探してたんでしょ?見つかったの?」
ベポの言葉を聞いてはハッとした表情を向けた。そして暫くの沈黙を置いて首を横に振る。