第9章 番外編
「お前はこの島に住んでるのか?」
「いえ、私はたまたまこの島に寄っただけなんです。必要なものを揃えたら明日には出航しますよ。貴方は?」
「おれもだよ。この島は通過点だ。」
「何処かに向かってるんですか?」
「まぁな。」
「…貴方は海賊?」
「ははっ!違うよ、おれは革命軍だ。」
「革命軍…??」
聞き慣れない言葉には首を傾げる。丁度届いたガレットとパスタをお互い食べつつ、無知な彼女に青年は革命軍とはどういった組織なのかを簡単に説明した。
「おれはさ、この不条理だらけの世界を変えたい。今はその為に海に出たんだ。お前はなんで旅してるんだ?」
「私は……自分が知らない世界をもっと見てみたいのと、大切な人を守る為…ですかね?」
「へぇ、恋人でも居るのか?」
「う、は…はい。」
意地悪くニヤニヤと口角を上げながら笑い、問い掛ける彼には身を縮こませながら頷いた。すると青年は小さく溜息を吐き出しの頭へ手を伸ばし短く撫でる。
「もう少し早くお前と会いたかったな。」
「…?そうですか?」
それから他愛無い話を2人は続ける。初めて出会った筈なのに、何故かとても話しやすく彼との会話は思ってる以上に弾む。少し食事をするだけのつもりがいつの間にか時は流れ、日が落ち始めた頃やっと2人は席を立った。
「悪ぃ、結局遅くまで付き合わせちまった!」
「いえ、私もとても楽しかったです!」
「おれも楽しかった。そろそろ行くよ。またな、!」
「はい、ありがとうございました!」
彼と握手を交わし、分かれた。数歩歩いてから、は違和感に気付く。彼の名前を自分は聞いていない。そして、己も名乗っていなかった事に。それなのに何故自分は別れ際に名前を呼ばれたのだろう。すぐ様振り返ってみたが彼の後ろ姿はもう、見ることは出来なかった。
「不思議な人…。」
すっかり暗くなった頃、は約束の酒場へと着いた。そこには既にハートの海賊団のクルーたちが集まっており酒を浴び、泥酔している者も多く見受けられる。
「…凄い。」
どんちゃん騒ぎの中、店の奥でトラファルガーの姿を見つけた。彼は騒ぎに加わる事は無く、1人カウンターで酒を嗜んでいる…かと思ったが、よく見れば隣やその後ろは知らない女達が囲んでいた。