第6章 5day
「どうなんですかね…私はこの力を上手く扱えないから。それに海に落ちてしまえばほかの能力者と同じです。」
「上手く扱えるようになりてェのか?」
「…それは。」
答えられない。天界へ帰る予定の自分が、そうだと答えれば何故かと聞かれてしまうのは明白だ。が困ったように瞳を伏せるとトラファルガーは1歩彼女へ詰め寄る。
「何故答えられねェ。」
「自分でも…分からなくて…。」
「…そうか。」
短く答えたトラファルガーの両腕がの顔の横へ伸び壁に手をつく。逃げ場を失った彼女は瞠目し小さく唇を開閉させた。
「あ、の…ロー?」
「本当に分からねェのか?」
「っ……。」
ぐっ、と寄せられた顔には唇を引き結ぶ。トラファルガーの心を探るような視線から逸らすことが出来ない。
「もう一度聞く。上手く使えるようになりてェのか。」
「…なりたい。私も…自分の身だけでも、守れるようになりたいんです。」
「なんの為に。」
「私……。」
は言葉にするのを躊躇った。なんと答えるべきなのかが分からない。それに、恥ずかしい。貴方とこれから先、もう少しだけでもいいから隣に居たいと言うことが。
言い淀む彼女を見て焦れたようにトラファルガーは片手での腰を抱き寄せた。密着する身体に彼女の心臓は大きく跳ねる。
「何…!?」
「おれはお前を手放すつもりはねェ。」
「え…?」
「欲しい物はどんな手を使ってでも手に入れる。それが海賊だ。」
「ロー…っ、ん!」
隻手が頬へ添えられ顔を固定されれば有無を言わさず唇が重なる。不意をつかれたは驚き、身を固めると薄く熱い唇が高いリップ音を立てて離れ再び啄むように重ねられた。何度もそれを繰り返す内に彼女が小さく口を開くと、機会を伺っていたかのように赤い舌先がぬるりと侵入して来る。
「ん、ぅっ…!」
「…はっ。」
厚い舌が口内を舐りざらつく表面同士が擦れ、ゾクゾクと背筋が痺れる。唾液が混ざる淡い水音と翻された舌腹が頬裏や歯列を丁寧になぞる感触にの瞳には羞恥からか涙が浮かんだ。
長く深い口付けが終わると離れた舌先同士唾液の糸が紡ぎプツリと途切れる。
「っぷは……。」
「…下手くそ。」
「し、失礼です…!いきなりされたからびっくりしただけです!」