第6章 5day
彼は喉を鳴らし一頻り笑った後、の頭へぽんと手を乗せた。大きな手のひらが優しく撫でる。突然撫でられる意図が掴めずはきょとんとした表情をペンギンへ向けた。
「もしもの話だが…がこの船に残りたいって言うならオレは止めないし多分キャプテンも断らないだろう。」
「…はい。」
「でもオレたちは海賊だ。昨日は何も無かったとしても次は分からない。人を殺すかもしれないし殺されるかもしれない。をいつでも守れるかと言われれば、保証は出来ない。」
「人を…。」
言われてみれば確かに昨日はあの2人をトラファルガーは殺さなかった。自分は本当に海賊らしい彼らをまだ見ていないのだ。
「ただ自分の身を守るだけのつもりでも、誤って相手を殺してしまうかもしれない、それが命を掛けた戦いだ。半端な覚悟でこの船に居座ると後悔するぞ。」
それだけ言うとペンギンは去って行く。その後ろ姿を見ながらは思考を巡らせる。人を殺す事があったとしても、この船に残りたいのか。トラファルガーと共に過ごしたいのか。それ以前に自分が己の身を守れる程強くなれるのか。
「帰った方がいいのかな…。」
己の胸に手を当てて俯く。天界へ帰ってしまえばおそらく二度とトラファルガーと顔を合わせる事は無いだろう。彼に抱く感情が何なのか気が付いた私は、その辛さに耐えられるのだろうか。そんな自問自答を繰り返す。
「おい。」
「はい……あっ、ロー!?」
急に掛けられた声に反応を返すもいつの間にか後ろに立っていた彼にの身体が跳ねる。そして視軸が重なるなりみるみる体温が上昇していくのを自覚した。思わず1歩身を引くにトラファルガーは眉を寄せる。
「何をそんなに驚いてやがる。何度も呼んだぞ。」
「ごめんなさい…ちょっと考え事をしてて。」
「ほう…おれの事か?」
「え!?……そ、そんな事ないです。」
「…フフッ、わかりやすい奴。」
涼し気に笑うトラファルガー。はその姿を見て柔らかく瞳を細め彼に背を向け窓ガラスにそっと手を寄せた。ひんやりとした温度が掌からじんわりと伝わる。
「まぁいい。それで、お前の悪魔の実の能力は何だ?」
「私は…水を操れるんです。」
「ロギアか。能力者なのに水を扱えるとは…随分便利そうだな。」