第6章 5day
5日目の朝。は潜水艦の中に有る窓ガラスから海の中を眺めていた。時折通る魚達を何となく目で追い、この船に落ちてからの数日間を振り返る。
賑やかで強い船員たち、優しく接してくれる船長。怖い思いもしたが彼らは己を助けに来てくれた。見捨てる事も出来たのに。芽生え始める帰りたくない、もっとこの人達と一緒に居たい。そんな感情を自覚してしまった。けれど自分がこの船に残る事でまた迷惑を掛けてしまう。
「おはよう。随分早いな。」
「あ…ペンギン。おはようございます。ちょっと眠れなくて。」
後ろから掛けられた声に振り返るとそこに立っていたのはペンギンだった。は曖昧に笑うと彼は特に気にする様子も無く隣へ立つ。
「疲れてるんだろ。…それで、海賊に対する印象は変わったか?」
「え?…あぁ、そういえばペンギンには初めて出会った頃言われましたね。戦ってる所を見ればまた印象が変わるかも、って。」
「あぁ。」
頷く彼には昨日の事を思い出すように瞼を降ろした。再び地獄のような生活へ戻されるかと思っていた最中現れたトラファルガー。悪魔の実の力を使い戦う姿。
「……何も変わりませんよ。かっこいいとすら思いました。」
「キャプテンが?」
「はい。私も悪魔の実を食べたんです。けれど私にはその力が上手く利用出来なくて。ローは手に入れた力をちゃんと自分のものにして戦ってる。」
「は戦いたいのか?」
「あ…いえ、戦いたくは無いです。でも自分を守れるようにはなりたいな…って。」
そうすれば、この船に残る事が出来るかもしれない。
そんな考えが自然に浮かんだ自分に驚く。はハッとした表情で口元を抑え顔を逸らした。その反応を不思議に思ったペンギンは訝しげに彼女を見詰める。
「……もしかしてお前は…。」
「ち…違うんです!あの…私またこうやって島から飛び出してしまうかもしれないから!」
「…ふぅん?」
何かを察したペンギンは意地悪く口角を上げて笑う。この表情はどこぞとキャプテンにそっくりだな…。そんな事を思いは複雑そうに唇を曲げた。
「もう…その顔ローにそっくり。」
「初めて言われたな。」