第5章 4day
「なん、で…!」
「…ここにいたか。」
俄に息を切らした彼が、低いブーツの音を立て近付いてくる。の視界が滲んだ。同時に、迷惑しかかけられない自分に嫌気が差し目を閉じて俯く。ここで彼にまた助けられた所で、また同じ事を繰り返してしまうかもしれない。他のクルーが傷付けられしまうかもしれない。ならばこのまま、あの男に引き渡された方が、良いのかもしれない。そんな考えが頭の中をグルグルと駆け巡る。
「わた、しは…!」
「余計な事を考えるな。"シャンブルズ"」
「きゃっ!」
足元の木片を拾った彼が能力を発動させると、と木片はあっという間に場所が入れかわった。明らかに力が入らない様子でトラファルガーの身体へもたれ掛かる彼女に違和感を覚えた彼はおもむろに手鎖へと触れた。フッ、と一瞬のうちに力が抜け、船を覆っていたはずのドームが消える。
「…海楼石か?お前、能力者だったのか。」
「そう、です…。それよりなんで来たんですか!?私はあなたのクルーじゃない、助けなくていい!」
「断る。クルーかどうかは関係ない。」
「どうして…!」
「ゴチャゴチャうるせェ、とにかくさっさとここを出る。話はその後いくらでも聞いてやるよ。鍵は……」
「鍵ならオレ持ってるよ。」
小さな部屋に、2人以外の声が響いた。トラファルガーはすぐ様声の方向を睨む。壊された扉の前に立った男…オリビアだった。彼はの手錠の鍵と思われるそれを指先で摘み挑発するように揺らす。すぐにルームを展開し直したトラファルガーだったが、シャンブルズを使うよりも先にオリビアは口を開く。
「おっと。妙な真似すんじゃねェよ。この鍵、海に投げちまうぜ?この辺の海は深いからなー。落ちたら、困るのお前らじゃない?」
「…別に手錠を壊せばいいだけの話だ。消されたく無ければそこを退け女装野郎。」
「アレ、なんだ気付いてたのか?チャンよりは賢いみたいだな。つーか悪いけど、その子置いてってくんねェ?オレらも頭に殺されたくねェからさぁ
ー。」
「知ったことじゃねェ。」
「あっそ…。んじゃあ仕方ねーな。
力づくで奪い返すよ。」