第5章 4day
「ここは貨物船。…ま、実際は海賊船みたいなモンだけどな。」
「……そう、ですか。」
手首は、手錠で拘束されていた。…力が、抜ける。
倒れたままろくに起き上がることも出来ないは、悔しそうに男を見遣る。すると不意にどこか違和感を感じ取った。なんだか何処かで見た事があるような、ないような。
「…知ってるか?その手錠、海楼石って言うんだ。」
「…かいろう、せき?」
「相棒が妙に心配症でさァ。万が一能力者だったら面倒だから付けとけって言われたんだけどまさかビンゴとはな。何の能力だ?」
「……知りません。ここから出して下さい。」
「そういう訳にはいかない。っつーか案外強気だな?店の中ではあんなに弱々しくて可愛かったのに。」
「店…?」
「わかんねェ?その服選んで、化粧したオレの顔忘れちまった?」
「!!あなた…リディ、さん…?」
「ご名答。上手かっただろ?女装。因みにあのチーターはあの店の店主だ。」
「そうだったんですね…。」
感じていた違和感は、彼の言葉で直ぐに解けた。だがそれと同時にあっさり騙され、彼を信頼してしまった自分に情けなさを感じては下唇を強く噛み締める。人間を信じる事が怖い。信じれば、裏切られた時に辛くなる。
「…最初から、私を狙っていたんですか?」
「いや?元々狙ってたって訳じゃねェけど、ずっとアンタを探してる人が居るんだよ。オレたち人攫いの中じゃ有名だ。その首輪つけた奴。覚えてるだろ?」
はハッとして喉元の首輪を撫でた。みるみると顔が青ざめる。この首輪の主の依頼で自分を捕らえたのだとしたらこの船の行き先が何処なのかは直ぐに理解が出来た。
「ドレスローザに…向かっているのですね……。」
「よく分かったな。助けが来ると思うか?トラファルガーが。」
「…知りません。私は彼のクルーでは無いです。…それに、来て欲しくありません。」
「ふーん?そう言う割に、随時悲しそうな顔するな。」
「私をどうする気ですか?彼に引き渡すのですか?」
「もちろん。…そうすりゃオレたちの目的も果たせるかもしれねェからさ。」
「……そう。」
「じゃ、オレはアルにアンタが起きたこと知らせねーとなんねーから。大人しくしてろよ、チャン。」