第5章 4day
暗んだ街の中。と男達の姿は完全に見失ってしまった。ペンギン、シャチ、トラファルガーの間に静寂が訪れ張り詰めた空気が一帯を覆う。
「…何故止めた。ペンギン。」
「もう少し冷静になって下さい。」
「おれは冷静だ。」
「違う。おれが貴方と何年付き合ってると思ってるんすか。」
淡々と述べられる言葉の羅列にトラファルガーは奥歯を噛み締めた。冷静さを欠いている自覚はあった。焦りと苛立ちがただ募る。自分が居ながら、彼女をまんまと盗られた悔しさ。
「…おれもシャチもなんで貴方がこの作戦を立てたのかも、知ってる。だからこそ慎重になってる筈です。おれ達も、キャプテンも。」
「…アァ、わかってる。」
「…はクルーじゃない。」
「ッ…おいペンギン!その言い方はねェだろ!」
思わずペンギンの胸倉を掴んだのは、今まで何も口を挟んで来なかったシャチだった。サングラス越しの瞳は明らかな怒気を含んでいるが、相変わらずペンギンは冷静でその表情すら、見えない。
「…確かに、クルーではねェな。」
「キャプテン!」
「今の作戦を棒にふる気もねェ。おれの人生の全てだ。この命を与えてくれた人の本懐を遂げる。だが…
…惚れている女を盗られて黙ってるつもりもねェ。」
シャチとペンギンの表情が固まった。3人の間に再び沈黙が訪れる。トラファルガーの顔は至って真剣そのもので。その沈黙を突き破ったのは、他でもないシャチの吹き出すような笑い声だった。
「ぶふッ…だってよペンギン、諦めろ。こう言い出したキャプテンはもう何言っても聞かねーよ!」
「全く……どうなっても知りませんよ。買い物中に集めた情報だと、ここに滞在してる海賊は貨物船を装って海軍の目を欺いているらしいです。狙うならそっちですね。」
「わかった。直ぐに出航の用意だ。他の奴らにも伝えろ。」
「「アイアイ、キャプテン!」」
・・・
「ん……。」
「おっはよーチャン。目が覚めたか?」
「……ここは…。」
一方が目を覚ました時、そこは既に檻の中だった。鉄の格子に囲まれた、大きな鳥籠。扉には頑丈そうな鍵が付いている。その外では昨日チーターの上に跨っていた男がヘラヘラと笑い手を振った。