第4章 3day
「私ね、本業はメイクアップアーティストなのよ。せっかく綺麗何ですもの。彼とのデート、もっと楽しみたいでしょう?」
「デート!?私とローはそんな関係じゃ…!ただ買い物してるだけで…」
「それはもう立派なデートよ。椅子に座って、目閉じて!あ、背中に羽根通す為の穴開けちゃうわよ。」
彼女の勢いに押され、は大人しく瞼を降ろした。ファンデーションが肌を覆い、淡い桃色のチークが頬へ乗せられ、長い睫毛は持ち上げられ、綺麗な瞳を強調させる。暖められたコテで緩やかなウェーブの掛かった髪は更に巻かれ、ハーフアップに纏められては可愛らしい黒リボン型のバレッタが留められた。
「はい、おしまい!バレッタは私からのプレゼントよ。それじゃあ、彼の元に戻りましょうか。」
「わ、わ…すごい、私じゃないみたい…!」
彼女に背を押され、は元来た店の入口へと向かった。内心、1時間程も彼を待たせてしまった事に罪悪感と怒っているのでは、という不安を抱え。
店内奥からこそこそと入口を見てみれば彼は店の壁へ背を預け腕を組みただ静かに瞼を降ろしていた。…眠ってる?は彼の元へ歩み寄り顔を覗き込む。
「ロー…?待たせてすみません、終わりました。」
「おせェ、いつまで待たせて……。」
ぷつりと言葉が途切れた。待ち侘びた彼女の声に双眼を開けば、視界に飛び込む彼女の姿。施された化粧に服の効果もあってか、大人びてやけに、色っぽい。急に無言になってしまったトラファルガーには眉を下げた。
「あの…似合わないですかね…?」
「何言ってるの、私がお化粧したんだから似合わないわけ無いじゃない!ね、船長さん?」
「…頼んだ覚えはないがな。」
「素直じゃないわね…。まぁいいわ!お代はツナギを取りに来る時にまとめてで頂戴。あ、お化粧代はいらないから。」
「そうか、わかった。行くぞ。」
「は、はい。ありがとうございました、リディさん。」
「また来て頂戴ねー。」
笑顔で頭を下げたに、同様に笑顔で返すリディ。2人の背が見えなくなれば彼女はふと笑みを消した。グッと大きく伸びをすると、丁度店主が徐に外へと出てきた。
「オイ、店の外で気を抜くなよ。」
「へいへい。あの方と連絡は着いたのか?」
「アァ、すぐに回収しろと。」