第4章 3day
「でも…!」
「命令だ。」
この瞳と甘いテノールボイスに逆らえない。はギュ、と瞼を降ろした。自分の心臓がまるで壊れてしまったかのように煩い。彼の吐息が、やけにはっきり聴こえる。唇が触れ合うまでもう僅か数センチも無い。その時だった。
トラファルガーの部屋の扉が開く。どさどさと床に雪崩落ちるべポ、シャチ、ペンギン含むクルー達。
「ほら、おめーらが押すから扉開いちまったじゃねーか!」
「お前がうっかりノブに手を当てたからだろ馬鹿シャチ。」
「そ…それよりアレ…。」
つまり、今なだれ込んできたクルー達はどうやら会話をこっそりと盗み聞きしていたらしい。その上もうすぐで奪う事の出来たモノをお預けにされたトラファルガーは口元に笑みを浮かべた。が、その目は一切笑っていない。はと言えば、聞かれていたことで羞恥心は限界まで上り詰め顔を林檎のように真っ赤にさせたまま凍り付いた。
「フフッ…そんなにバラされたかったのかお前ら…。」
「キャッ…キャプテン!おれは島が見えたよって知らせに来ただけだよ!」
「嘘つけェ!!」
「見てただろうが!」
「べポは許す。」
「クマ贔屓だ!!」
「うるせェ。お前ら気を楽にしろ。"Room"」
それからは阿鼻叫喚だった。バラバラになった身体を探して船内を彷徨くクルー達。バラされたにも関わらず動き回る彼らには驚いたが直ぐに能力の説明を受け納得し、にわかな同情を覚えた。
「さっむーい…!凄い!真っ白!」
まだ若干名自分の手足を探しているクルーも居たがある程度落ち着いた頃甲板に出てみれば思いの外寒かった。吐き出した吐息は真っ白に白む。それでも外の空気は澄んでいて気持ちがいい。
船は既に島への上陸の準備に入っていた。どっしりと積もった雪。は目を輝かれた。
「雪は初めて?」
「はい!こんなに美しいんですね!」
見た目の愛くるしさとあざとさでばらされる事だけは回避したべポはの隣に並び到着した島を眺めた。どうやらちゃんと栄えた島らしい。人も多いが、特に海賊に警戒を見せる様子は無かった。
「おーい、、べポ!上陸するぞ!」
「はい!」
「はーい!」