第4章 3day
「雨と変わらねーよ。」
「もう、そういうこと言わないで下さいよ。」
む、とへの字に曲げられた唇。初めて出会ったその日よりもコロコロ変わる表情。緊張感が解けつつあるのかその顔は見ていて飽きない。寧ろ、愛らしさすら感じる。美しい見た目に対し、子供のように喜怒哀楽で変わる顔。そのギャップが男心を擽った。
トラファルガーの指先が背から頭へと這い上がり柔らかな髪を撫でる。自分の使うシャンプーと同じ匂いがふわりと香りそれだけで、まるで自分のものになったような気分だ。その手つきが柔らかく、気恥ずかしさを感じながらもは抵抗を見せない。
「もう少し寝ててもいいだろう。このまま抱かれてろ。」
「……じゃあ、私もローさんの事抱きしめてもいいですか?」
「…へェ、恥ずかしさとやらは無くなったのか?」
「恥ずかしいしドキドキするけど…暖かいし、ローさんの匂い、すごく安心します。」
「…そうか、好きにしろ。」
「わぷっ。」
髪を撫でていた手が不意に後頭部に回されたかと思うと、強引に引き寄せられた。更に心臓がドクドクと脈打つのを感じながらはトラファルガーの背に再度腕を回した。自分よりもガッチリとした男の身体。意識すればする程羞恥心が募る。だが不思議と離れたいとは思えない。まるで魔法のように、彼の傍は心地いい。
「……ローでいい。」
「?ローさん…?」
「そうじゃねェ、呼び捨てでいいと言っている。」
「あ…えっと……。」
「どうした、呼べねェのか?」
後頭部に寄せられた掌の力が緩んだ。が顔を上げ彼の表情を上目で盗み見て見ると、至極楽しそうに口角を吊り上げていた。シャチもペンギンも気軽に呼べたのに。彼の名前を呼び捨てにするのは、どこか気恥ずかしくて。
「…ロー…。」
「聞こえねェ。」
「意地悪。」
「アァ、お前はいじめたくなる。」
「ばか。」
「…生意気な口は塞いでやろうか。」
幾度か己の手当をしてくれた優しい指先が唇を捉えた。逃げようと身じろぐが腰に回された腕は相変わらずびくともしない。かと思えば、徐に彼の身体が自分の身体の上へと跨った。…この光景は、2度目だ。あの日は恐怖と不安しか無かったが今は違う。見下ろす端正な顔、綺麗な瞳。掌が、頬を撫でた。
「あの、ロー…!」
「目を閉じろ。」