第3章 2day
元気の良い返事。スモークガラスにくっきりと彼女のシルエットが映し出される。丁寧に巻かれた包帯を回収し、脱衣場を出たトラファルガーは持ってきたコップを机に置き代わりにおにぎりを皿から一つ手に持ち頬張った。空腹の身体に染みる。
それから丁度おにぎりを平らげた所だった。洗面所から、が顔のみひょっこりと覗かせる。
「あの…ローさん?」
「どうした、ツナギが小さかったことは無いだろう。」
「むしろ、結構大きいです…。」
キィ、と扉が軋む音を立て出てきた。やはり一番小さいといえど、彼女は割と身長が高い。には大きかったらしい。は完全に手元まで覆い隠すツナギの裾を捲った。
「我慢しろ。羽根は通せたみてェだな。」
「はい、ありがとうございます。」
「治療の続きだ、来い。」
大人しくトラファルガーの言葉に従い、導かれるままベッドへと腰掛ける。ドライヤーが無いため、タオルだけで拭かれた彼女の髪は僅かに濡れ、肌はしっとりと潤いを持ち湯の熱で俄に上気した頬。女性特有の色気を放つにトラファルガーは目を逸らす所か湧き上がる劣情を隠すように手早く昨日使用した止血剤、新しいガーゼと包帯を取り出し、同じように手当を施す。はその手をじっと見つめる。
「…ローさんの手は綺麗な手ですね。」
「お前の手は小せェな。」
「女ですから。」
2人の間に沈黙が走った。しかしそれも不思議と嫌ではない。ただ、静寂。程なくして治療を終えると、は立ち上がり自分が持ってきた酒ビンの隣にあるコップに手を付けた。
「これ、飲んでもいいですか?」
「構わねェが…」
「っ…!」
「酒だぞ。」
シャワーを浴び、乾いた喉を度数の強いアルコールが潤す。思わずむせ込んだはコップを直ぐに机へと戻した。
「透明だったから…お、お水かと…。」
「ガキには強過ぎたか?」
「子供じゃありません。」
くらりと視界が揺らぐ。シャワーで上がった体温が更に高まるのを感じた。はふらつく足取りで、部屋の扉へと向かう。が、トラファルガーの手が彼女の手首を掴むことであっさりと止められた。