第7章 希望の道
セレンside
耳が聞こえる…。
エドが…私のことを、マルコーさんに…。
エド…なんで…?
なんで…私を…?
駅で列車を待つ間も、それが頭を離れなかった。
確かに、耳が聞こえる。
それはなんと嬉しいことだろう。
けど、その喜びを、エドへの罪悪感が覆い尽くしていた。
少「本当に、いいのか?」
エ「え?」
少「石本体だけならば、その場で力ずくで取り上げることもできた」
…少佐…。
エ「ああ。喉から手が出るくらい欲しかったよ。でも…」
ア「この町の人達の、大切な支えを奪ってまで、元の体に戻りたくはないよ」
エ「賢者の石が作れるんだってわかっただけでも収穫だ。また、別の方法を探すさ!!だから…」
…………?
エ「そんな顔すんなよ、セレン」
「…!…なんで…私を…?」
ア「僕はなんとなくわかるよ」
「……アル?」
エ「俺の厚意だ。素直に受け取っとけ」
「…あなた達ってそんな声してたんだ…。これで…みんなと普通に話せるね。…ありがとう…」
アエ「…ニコッ」
ポッポー
『音』という世界を取り戻した私にとって、世の中には、初めてのもので溢れ返っていた。
汽車の汽笛、風に揺れる草木のざわめき、人々のしゃべり声。
そして…エドやアル、少佐の声。
多分、エドやアルへの罪悪感は決して消えない。彼らが体を取り戻す、その日まで。
けど、今だけなら…『音』という世界を、楽しんでも…いいよね…?
そんな風に、思った。