第6章 哀しみの雨
大「すまんな。包囲するだけの時間を稼いでもらったというのに」
少「いいえ。時間稼ぎどころか、やられぬようにするのが精一杯で…」
大佐と少佐のやりとりを見て、スカーの強さを実感した。
下手したら…殺されていた。
骨折だけですんで良かった。
すると、
ヒ「おっ!!終わったか!!」
ピョコン、という効果音が聞こえてきそうな様子で、ヒューズ中佐が出てきた。
少「ヒューズ中佐!!今までどこに」
ヒ「物陰に隠れてた!!」
大「お前な!!援護とかしろよ!!」
ヒ「うるせー!!俺みたいな一般人を、お前らデタラメ人間の万国びっくりショーに巻き込むんじゃねー!!ぼーっとしてねえで、やることあるだろ!!」
このふざけたやりとりをぼーっと見ていた私は、不意にアルのことを思い出した。
「…アル!!」
見ると、エドもアルに駆け寄ろうとしていた。
私はアルに駆け寄ろうとしたが、骨折した左足と右手に激痛が走った。
「っ!!!!あ、アル…」
私は骨折した足を使わずに、ずりずりとほとんど這うようにしてアルに近寄った。
エ「アルフォンス!!大丈夫か!?おい!!」
周りの神妙な視線も気にせず、私はアルに近寄った。
エ「アル…アルフォンス!!」
ドゴッ
エ「ぐあああああ!!」
ア「なんで僕が逃げろって言ったときに逃げなかったんだよこのバカ兄!!」
エ「いや、だからアルを置いて逃げるわけには…」
ア「それがバカだっていうんだぁ!!」
ドゴッ
エ「ぐあああああ!!」
エ「なんでだよ!!俺だけ逃げたら、お前殺されていたかもしれないじゃんか!!」
ア「殺されなかったかもしれないだろ?わざわざ死ぬほうを選ぶなんてバカのすることだ!!今回はセレンが助けてくれたけど、セレンだって怪我してたんだ!!セレンは無理して助けてくれたんだよ!!セレンの怪我が悪化したらどうすんだよこのバカ!!」
エ「あ、兄貴に向かってあんまりバカバカ言うな!!」
ア「何度でもいってやるさ!!」
アルは、無事だった右手でエドのシャツをつかんだ。