第1章 運命論的encounter
未開封の郵便物に手を付けようとした時、ベルがカランと音を立てる
「あ、いらっしゃい…」
また近所の小学生が寄ってくれたんだと思い、出入り口に顔を向けると、予想とは違う人物に目を見張る
初めて見る人
自分と同じくらいの年齢だろうか
すらりとした細身の体にハンチング帽を被り、胡桃色の外套に同色の七分丈のスラックス、緩く締めたネクタイは裏返っていて
どこか謎めいた雰囲気を纏った出立に、視界どころか意識までも奪われる
その人物はこちらの視線に気付いたのか、猫のように細められた目でジッと見つめ返しポツリと呟いた
「…どーも」
そう言うと店内に入り、陳列された駄菓子を物色し始める
地元の人…ではなさそう
観光客、と言ってもこの辺りに名所旧跡はないし
考えを巡らせていると、そのお客は陳列棚を眺めたままもう一度口を開く
「……なに?」
「え…?」
「そんなに見られると…気になるんだけど」
「え、あっ…ご、ごめんなさいっ!」
急いで視線を下へ向けると、かあっと顔が熱くなるのがわかった
成人した男性が一人で来店してくることが珍しいとは言え、お客様になんて失礼なことを…
田舎の駄菓子屋であろうともお客様は大事にしなさい、とおばあちゃんはいつも言っていたのに
気を取り直して、何か会話をしようと顔を上げた時だった