• テキストサイズ

UNKNOWN WORLD【文スト/江戸川乱歩】

第1章 運命論的encounter


未開封の郵便物に手を付けようとした時、ベルがカランと音を立てる

「あ、いらっしゃい…」

また近所の小学生が寄ってくれたんだと思い、出入り口に顔を向けると、予想とは違う人物に目を見張る

初めて見る人

自分と同じくらいの年齢だろうか
すらりとした細身の体にハンチング帽を被り、胡桃色の外套に同色の七分丈のスラックス、緩く締めたネクタイは裏返っていて
どこか謎めいた雰囲気を纏った出立に、視界どころか意識までも奪われる

その人物はこちらの視線に気付いたのか、猫のように細められた目でジッと見つめ返しポツリと呟いた

「…どーも」

そう言うと店内に入り、陳列された駄菓子を物色し始める

地元の人…ではなさそう
観光客、と言ってもこの辺りに名所旧跡はないし

考えを巡らせていると、そのお客は陳列棚を眺めたままもう一度口を開く

「……なに?」

「え…?」

「そんなに見られると…気になるんだけど」

「え、あっ…ご、ごめんなさいっ!」

急いで視線を下へ向けると、かあっと顔が熱くなるのがわかった

成人した男性が一人で来店してくることが珍しいとは言え、お客様になんて失礼なことを…
田舎の駄菓子屋であろうともお客様は大事にしなさい、とおばあちゃんはいつも言っていたのに

気を取り直して、何か会話をしようと顔を上げた時だった


/ 57ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp