第1章 運命論的encounter
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カランコロン
年季の入った少しガタつく硝子戸が引かれると、そこに取り付けられたベルが役目を果たそうを大きく鳴る
「今日もありがとね、気を付けて帰るんだよ」
はーい、と元気に返事をする男の子たち
笑顔で彼らを見送ると、つい長い息が漏れる
無人になった店内に戻り、ぐるりを中を見渡すと、三坪程の広さの中に広がる豊富な種類の駄菓子たち
ここはこの集落で唯一の駄菓子屋
半年前に他界した祖母から譲り受けたものだ
祖母が自宅を改装し経営を始めた当時はこの辺りでは唯一の商店で、食料品や雑貨なども販売していたが、時代の移り変わりと共に徐々に品数が減り、私の物心ついた頃には、既に駄菓子のみの販売だった
40年以上客を迎え入れているため造りは古いが、綺麗に掃除され丁寧に商品が陳列されている
店内の隅には使い古した四人掛けのイスとテーブルが置いてあり、学校帰りの小学生たちが時々宿題をしたり、ゲームをしたりと屯(たむろ)っている
こんな萎びた駄菓子屋に今でも人が集まるのは、駄菓子屋だからじゃない、祖母の人柄や築き上げたが人望あるからだと思う
さっきまで賑やかだった店内に淋しさを感じながら定位置であるレジの横へ移動する
側に置いてある様々な書類や未だ送られてくる祖母宛の郵便物に目を遣ると、また溜息が漏れてしまう
祖母の遺言通りお店を再開させたはいいが、なんせ初めての世界
やらないといけないことや、わからないことだらけ
頭がパンクしそう
生まれ育ったこの土地を中学校卒業と同時に離れてから、パティシエになる夢を追いかけていたはずなのに、気付けば田舎の駄菓子屋さん…
正直不満はある
でも大好きだったおばあちゃんの望みも叶えてあげたい
「…はあ……」
今日何度目かわからない深い溜息が零れ落ちた