第6章 漆黒の中の懐古と猜疑
あんなに一緒にいた私達だったのに
遊んでいたのは小学校六年生の途中までで
その頃から一緒にいると同級生が冷やかしたり、潤くんのことが好きな女子から色々と聞かれたりすることが多くなった
転校生故の性質なのか仲間外れにされることをひどく怖れていたこともあって、女子たちの顔色を伺い距離を取るようになってしまった
私の他所他所しい態度を感じ取ったようで、お互い徐々に話さなくなり、遂には一切言葉を交わすことなく卒業
それからの潤くんのことは何も知らないままだった
今思えば酷いことをしたと思う
多感な年頃…思春期では仕方のないことなんだろうけど、矢張りどこか寂しかったのを憶えてる
そしてそれは彼も同じだったようで
時々遠くから私を見つめてくるあの瞳が、今目の前にいるそれと一緒だった
何ともしれない寂しい気持ちが押し寄せてくる
あの時のこと謝った方がいいのかな…?
暫く考えあぐねていると、頭上からふっと息の漏れる音がし、困ったように、でも優しい眼差しを向けられた
「そんな顔しないで」
…もしかしたら私が気にする程何も思っていないのもしれない
潤くんは子供の頃と変わらず本当に優しいな…
ごめん、と小さく謝り私も少しだけ微笑み返すと、目元が一層和らぎ、気を取り直した様子で封筒を差し出してきた
「あと、今日はこれも渡しに来たんだ」
真っ白な角2サイズの封筒の下には『雨宮建設株式会社』と印字されてある
「これは…?」
不思議そうに見つめる私に封筒を持つ手をずいと伸ばしてきた
「中身は雇用契約書だよ」