第6章 漆黒の中の懐古と猜疑
雨宮潤くんとの出会いは小学四年生の時
両親が亡くなった後、おばあちゃんとは別で暮らしていた為、引っ越すと同時にこの集落の小学校に転校することとなった
夏休みなどでよく泊まりには来ていたお陰で、全くの知らない土地と言う訳ではなかったけれど、それなりに都会育ちの私にとって山や畑に囲まれた場所に移り住むと言うことはまだ子供の私にとって不安でしかなかった
きっと都会から来たなんて知られたらイジメられるかもしれない
そんな気持ちが渦巻く中、初めて声を掛けてくれたのが潤くんだった
大きな瞳と白い肌
まるでお人形のように美しくて
シャツをきちんと第一釦まで留めた整えられた身なりにすごく驚いたのを憶えてる
見た目は大人しそうに見えるのに、話すととても快活で、外遊びが好きなのかよく体中に傷や痣を付けていた
ここに引っ越してから一番初めに出来た友達だった
「ふふっ」
「え?」
「あ、ごめん、小学生の頃を思い出しちゃって」
目をぱちくりと瞬かせて、私を不思議そうに見つめる瞳はやっぱりあの頃とは何も変わっていない
「憶えてる?イタズラしておばあちゃんに怒られてたの」
「あー…そうだったね」
その苦笑いは、どうやら思い出してもらえた様子
そう、
こう見えて彼は、所謂“悪ガキ”で
兎に角、子供が思い付く様なイタズラを毎日二人してやってのけた
口煩い先生に黒板消し落としは当たり前
学校内で水鉄砲をして水浸しにしたし
郵便ポストに蛙を入れて近所の人を驚かせたりも…
ただ彼は、子供相手には絶対仕掛けなかった
だからかクラスのみんなから人気があったし、私も早く環境に馴染めてイジメられることなく楽しく過ごすことができた
代わりに先生や近所のおじさんおばさん、特に私のおばあちゃんには随分と叱られたけども
その時の上目遣いに大きな黒眼を潤ませて謝る仕草が今と重なり、脳裏に蘇ってきたのだった
「いつも二人で謝ってたなぁって」
「今考えるとちょっとやりすぎだよね」
懐かしむ様に笑い合うと、10歳の潤くんが目の前に現れた感覚を覚えた