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UNKNOWN WORLD【文スト/江戸川乱歩】

第4章 open or close


少し汗ばんだ感触と華奢な体に反して大きな掌が首元を包み込む

初めて触れ合う肌に心音が加速していく

これは意識しない方が無理な話で

体はどんどん火照りだすし、自分の顔がどれくらい真っ赤なのか確かめなくてもわかる

そろりと見上げてみると、首元にあった視線がこちらを向いて、薄く開いた翠眼に私が映った

「…茹でダコちゃん」

「―――っ!」

そう言って微笑んだ顔は煽情的で、一気に跳ね上がった心臓は更に体温を上昇させていく


揶揄われてる…
悔しい、のにまんまと心を乱されてしまう


特段気にした様子もない名探偵殿は、暫く手を充てた後、次は鎖骨の上部へと移動していった

でも手付きに艶かしい感じはなくて、ペタペタと何かを確認するように押し当てていく動き


流石に何か、変だ


「あ、の…乱歩さん…何を…?」

「君は…大丈夫」

首元に伝わっていた掌からの温もりが離れると、体の熱が冷えていく
気持ちが落ち着いていく反面、消えてしまった温もりを名残惜しく思ってしまって
不確かな感情が微かに残る中、思考を現実に戻した

「大丈夫…って何が、ですか…?」

乱歩さんは質問には答えずまた黙り込んでしまう

彼のペースに合わせてきたものの、ここまでくると愈々(いよいよ)不満が募ってくる

「…そろそろ説明していただけませんか?」

思いの外、怒気を含んだ言い方になってしまい、乱歩さんの思案顔が歪む
そうだね、と腹を括ったのか私を正面から見据えると、強い瞳が露わになり、一瞬で空気が張り詰めた

背筋に嫌な汗が伝う

重苦しく口を開いた乱歩さんから予想だにしない一言が言い放たれた



「君のおばあさんは異能力者だ」



異能力、者…?


…以前聞いたことがある
常人ではあり得ない能力を持ち、常識では考えられない現象を引き起こす、特殊な存在

まさか…
だってそんな様子全く感じなかった

おばあちゃんはただの駄菓子屋のおばあちゃん…じゃないの…?


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