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UNKNOWN WORLD【文スト/江戸川乱歩】

第4章 open or close


扉を見据えたまま、低く淡々と漏らした声にぞわりと背筋が粟立つ

今まで感じたことのない雰囲気は、普段の掴みどころのない様子や探偵の顔とは全く違う

聞きたいことが沢山あるのに

未だ険しい表情を崩さない乱歩さんに、声を掛けることができなくて不安が一気に押し寄せてくる

ざわざわと騒ぎ立てる胸の奥が不快で仕方がない


やっぱり…開けてはいけなかったの?
私が知ってはいけない何かがこの部屋にあるの?


色々な感情が渦巻いて息が苦しい

思わず胸元を押さえると、乱歩さんがその仕草に気付き、一瞬ハッとした顔をしてまじまじと私を見る

その顔付きには鋭さが戻っていて

全てが謎だらけで脳内が混乱している中、ねぇ、といつもの細めた眼をして口を開いた


「昨日の夜、オムライスだった?」

「はい?」

?????

てっきりドアのことを話すものだと思っていたのに

あまりにも見当違いな話に、頭の中の疑問符が全部吹き飛んでしまう程で

「いいから答えて」

「えっと…そ、そうですけど…」

え?何、突然?
何が始まるの今度は!?

「その前の日は……魚料理?」

「え…はい、鮭をソテーして…」

当たってる
当たってる、けど……

次はご飯まで作れとでも言うんじゃ…?

「お菓子は…毎日作ってるわけではないね?」

「……大体2、3日に一度です…」

「もちろん味見もするわけだよね?
なのに痩せてるよね」

痩せてる…?
いやいや、お腹の贅肉なんか立派なモンだけど

まさか…胸のこと…?!
よく食べてる癖に胸に栄養がいってないとでも?!

「や、痩せてないですよ!
まぁおばあちゃんのことがあって多少は減りましたけど…」

ふーん、と聞いてるのか聞いていないのかよくわからない返事をすると、腰を曲げ、ずいと顔を近付けてくる

「え、なっ…!」

近い…近い!近いっっっ!!!

待って
わかんない
追いつかない

乱歩さんの質問にも行動にも

熱い
顔があつい
変な汗が出る

どこ見たらいいのかわかんない…っ!


恥ずかしすぎて視線を床に落とすと、乱歩さんの手が持ち上がるのが目の端に見えて

その手の行き先を追い掛ける間もなく、私の耳下から首元へと添えられた


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