第4章 open or close
「おかしい…?」
乱歩さんは瞳を開かせて反応すると同じ言葉を繰り返す
「はい。何だか重い感じがすると言うか…こんなに古いと、私の力でも衝撃が加われば多少は動いたりするものだと思うんですが…
見た目は木製ですけど、中の材質は、コンクリートとか鉄板とか…もっと硬いもので作られているような気がするんです」
「……へぇ…なるほど」
渡した鍵を翠眼に映し出すと、口角を上げポツリと呟いた
「面白そうだね」
不敵に笑うその表情は
土地売買を言い当てた時と同じ顔だ
あの眼は必ず全てを暴く
私がそうだったように、この扉も例外じゃないはず
妙な確信と期待で胸が高鳴った
解錠を今か今かと待っていると、乱歩さんはこちらを向き、にこりと無邪気な笑みを向けてくる
「名探偵を捕まえて、まさかタダじゃないよね」
「あ…そう、ですよね」
そっか…そうだよね
承諾してくれたとは言え無償な訳ないか
でも、一体いくらくらい支払えばいいのだろうか
探偵なんてもちろん雇ったことがないし、相場がわからない
そう言えば以前、浮気調査で探偵を雇って数十万支払ったなんてテレビでやってたな
…状況が全然違うけど
明確な金額を提示してくれた方が助かるのに
返答に困って見上げると、乱歩さんは瞳をキラキラ輝かせ、私の返事を待っている
あれ…この感じ前にも…
まさか…
一か八か
乱歩さんの表情を確かめながら恐る恐る口を開いた
「ガトーショコラ」
「………」
「ホイップクリーム添え」
「………」
「バニラアイスにキャラメルソース掛け追加で!」
「うん、乗った!」
やっぱ、こっちか!
本当にこれで請け負ってくれるなんて、変な気分だけど
なんだか少しずつ乱歩さんのこと、わかってきた気が…する…?
満足そうに口元を緩めた名探偵は、鍵穴に鍵を差し込みドアノブに手を掛けた