第2章 落翠
「お待たせしまし…ん?!」
扉を開けた先には乱歩さん…と数人の子供たち
いつも来てくれている近所の小学生たちだ
その子たちが乱歩さんを囲んで何やら騒がしそうにしている
「都会から来たの?すげー!!」
「ねえねえ、ヨコハマってどこにあるの?」
「そのお菓子、一人で全部買ったの?!」
次から次へと質問攻めする中、乱歩さんはと言うと、何とも楽しそうな顔
大量買いした駄菓子を自慢したかと思えば、一人でパクパクと食べている
…なんか…ガキ大将…??
「ちょ…ちょっと君たち!
そんな一度に話すと困るでしょう?」
なんとか場を落ち着かせようと子供たちを窘(たしな)めてみるけど、乱歩さん意外と迷惑ではなさそう…?
「あ、百菓おねえちゃん」
漸くこちらに気付いた一人が興味津々に私の顔を覗き込んでくる
「この人、おねえちゃんの彼氏?」
「え、なっ…!」
なんてこと言うんだこの子は!
きっと困ってる…!
思わず乱歩さんへ視線を向けると、顔を見た途端、かあっと熱が集まるのがわかった
「あー赤くなった!じゃあ本当に彼氏なんだー!」
「ここに一緒に住んでるの?」
「あ、まさかおねえちゃん結婚してヨコハマに行っちゃうとか?」
反応を面白がってなのか、今度は私が標的に
なかなか攻めた質問してくるな…
「だ、だから違うって!
ごめんなさい、子供たちが…」
「……別に」
乱歩さんの顔を見た時、すぐに否定できなかった
だって、知ってしまったから
初めて垣間見えた翠玉の瞳
大きく開かれた奥は揺れていて
片手で口元を覆った指の間からは、隠しきれないほど赤く染まった頰が見え隠れする
騒ぐ子供達の声が遠くなっていく
代わりにトクトクと響き出す心音
乱歩さんには驚かされてばかりだけど、子供に揶揄われたくらいでこんな反応するなんて
どうしよう
こんなの…
狡い……