第12章 サスケ君
「サスケ君……?どうしたの?」
私の額に手を当てながら、少し眉をひそめる。
「…………少し熱い。帰ったら、すぐ寝ろ」
「そう……かな?」
触られながら、心臓はドキドキと鼓動が早まり、顔を真っ赤にして固まってしまう。
「花奏、自然にしてくれ」
「……あ、ごめんね。何だか照れちゃって……」
急に、おでこを触られたら誰だって恥ずかしいよ。私が顔を赤らめて笑えば、サスケ君は、ほんの少しだけ、目を細めた。
「相変わらずだな。花奏は」
「そうだね……、何にも成長してないよ。おかげ様で、まだ中忍止まりなんだ……、ダサいよね。はは」
みんな上忍になっていくのに、私はまだ上がれない。雷さえ克服すれば良いんだけどなぁ。
「ーーそんな事を言えば、俺はまだ下忍だぜ……?」
「っ!あ、ほんとだ、
サスケ君、下忍じゃん!」
あははは……と思わず昔の頃みたいに、可笑しくて口を開けて笑った。
するとサスケ君が言う。
「……花奏、肩を貸してくれないか?」
「……え?」
私の肩に額をのせて、寄りかかったサスケ君は、しばらく黙ったあと、小さく呟いた。
「花奏が……、そばにいれば、と里を抜けてから、何度も……。今だけ、頼む……」
「うん……分かった」
肩にかかる重みに温もりが伝わる。穏やかな気持ちの中、私はゆっくりと、サスケ君の背中に手を回した。
「花奏……しばらく、このままでも良いか?」
「ふふ、大丈夫だよ。サスケ君……」
パチパチと優しく火が燃える。外は今も土砂降りに降りしきる雨。時折光る落雷の音。
いつの間にか規則的に眠るサスケ君の吐息が聞こえる。
外は嵐なのに、寝れるなんて、よっぽど疲れていたのかな。
あんなに恐がっていた雷鳴。ほんの少しで良い。雨も雷も、止まないで続いて欲しいなんて願ってる。
このまま、優しい気持ちでいたい。
大嫌いだった雷の音が、不思議と心地よい音色に聞こえた。
暖かく光る洞窟の中で、橙色に輝く焚き火を、柔らかく温もりの中、愛おしく眺めた。