第26章 カカシ先生
カカシは忘れていない。
花奏との約束は……ちゃんと覚えている。
何度も何度も懲りずに告白してくる女の子。歳の差を考えろと何度も忠告したのに。まったく引かない。どうやったら諦めてくれるのか。カカシはずっと考え続けた。
押しに押されて、とうとう上忍になればデートしてあげると、とっさに口に出してしまった。まさかこんなに早く昇格するとは思わずに。
「オレのどこがいいってのよ……」
はぁ……また深い溜め息が出た。もう30前の男と16歳だぞ。と独り言さえ出た。
好きだ好きだといわれてもカカシは、なにもしてやれない。
花奏の望む
デートをしたらいい。
じゃあ
今度はカカシが辛くなる。
もっと先がしたいのだ。そんな子供騙しの恋愛なんかしたくない。
甘い蜜を吸えば最後まで喰べたくのが本能で。
「あ、カカシ先生ぇー!」
花奏がカカシを見上げて手を振っている。やっぱり笑顔で。
「別の男を探しなさいよ」と忠告しても花奏は見つけてこない。
なんなら先月思いっきり男の告白を断っていた。
「カカシ先生が大好きだからごめん!」だって。
アスマが目撃したようで、カカシにわざわざ報告したあと、腹を抱えて笑っていた。
あーにくたらしい……。
若い時間は今しかない。
「オレはやめとけ」
カカシは何度も断った。
「でもカカシ先生がいい」
自分が大好きだというのだ。
たまに泣かれた。
さすがに困ったカカシは抱きしめて慰めた。
バカだねー。そう思う。
最後まで突き放す冷酷さが
ない自分に。
「花奏……、結婚するなら、いくらでもデートしてやるよ」
小さく……聞こえないように呟いた。花奏を本気で掴むと決めれたらどれほど楽か。
まだ未成年。
まだ手は出せない。
カカシの憂鬱な日々は
まだ当分続く予定だ。