第11章 銀さん(銀魂)
何回も気持ち良く抱いて、欲を吐きだした。触れ合う身体は心地よくて満たされる。
一つだけ最後の大事な部分。
心だけが、ずっと満たされない。
「お前さー、どこかであった事ないか?なあ、俺の名前知ってんだろ?だったら、会った事があるよな?教えろよ、頼むからよー」
そうやって何度も聞いた。答えてくれない。女は笑みだけ浮かべて、唇を塞いでくるだけ。
本当に、名前も住んでる場所も教えてくれねー。ますます苛々した。こんなエロくて化粧気が強くて美人な女の子を見た事がねー。
知ってる。俺の名前。
銀ちゃんって呼ぶ。
どこかで聞いた事がある。
この声をどこかで俺は聞いた。
いちいち、女の声なんか覚えていねーよ。
いったいどこだ。
この女は、バレたくないのか、顔を見られたくないのか、近くで顔を見せようとしなかった。
最後の方は無理矢理、腕を両手でつかんで、甘くトロける瞳を見ながら、交わりを何度も楽しませていただいた。
教えてくれよ、って寝る前にも聞いたのに、やっぱり教えてくれねーの。何でだ。
遊び慣れた女。か?本当に。
あんなに大胆に誘ってくる女だ。
さぞや、やり慣れているだろうと、欲望のままに楽しんだ俺だった。
疲れきって眠る女の子の髪を撫でながら、顔を見ていた。離れたくねーから、名前も知らない女を強く抱きしめて、目を瞑った。
多分、フェラは初めてかもな。バックも騎乗位も、全くした事が無かったんじゃねーか?
たどたどしく俺のを頑張って、咥えて舐める姿が、やけに愛おしく見えた。全然慣れた女じゃなかった。
名前だけじゃ足りない。全部教えてもらいたい。この女がどこに住んで何が好きか。食べ物は何が好物か。働いているなら何処の店か。すべて知りたい。
朝、目が覚めてすぐに隣を見た。
あの女は、先に帰っていた。
後腐れが一切ない。
泣くほど嬉しいぜ、本当に。
ベッドの横にある棚。お金と、水が入った未開封のペットボトルが置かれて、メモが挟まっている。
可愛い文字の、小さなメモ書きが、優しく添えられていた。
《一夜限りのお付き合い、嬉しくて幸せでした。銀ちゃん、ありがとうございます。大好きです。》
あの女の子を俺はずっと探している。
1週間経った。
手掛かりすら、一つも見つからないままだ。