第7章 サンジ君(DNH企画)
今夜は雨が降っている。窓から眺めて、叩きつける音を聞いていた。
今日、ちゃんと言おう。もう、大丈夫だよ。失恋から立ち直っているよ。だから、しなくて良いよって。
すると扉を優しくノックする音が耳に入った。
「花奏ちゃん、開けて良いかい?」
「うん、大丈夫よ」
声の掛け声に合わせて、ドアが開いた。外からの激しい風が部屋に入るのを止めるように、サンジ君は急いで扉を閉めた。土砂降りの雨の中を来たから、服や頭が濡れている。まるで服を着たまま滝にうたれたような姿をしていた。
「サ、サンジ君!大丈夫??待ってね、バスタオル持ってくるよ!」
「悪い。いきなり強風で煽られちまって、全然役に立たねェな。傘がボロボロだよ」
苦笑いを浮かべながら、頭をかいているサンジ君。私はその姿に、息をのんで見惚れていた。濡れて情事を終わらせた姿に似ている。頭に卑猥な映像が流れて、つい顔が火照った。
なにを見惚れてるの、私。しっかりしなきゃ。サンジ君は私に対して一度も好きだなんて言ってくれてないでしょう?サンジ君は、ただ失恋した私を身体で慰めてくれてるだけ。それだけ。好きになっちゃダメよ。
「…っ、すぐにタオル、タオルを。えっとー」
顔をそらして、隣の衣装ケースから大きめなバスタオルを取り出し、サンジ君のそばに駆け寄って「はい。使って?」とタオルを渡した。
「ありがとう。花奏ちゃん。今日はドリンク持って来てねェんだ。悪い。欲しかったよな?」
タオルで頭や肩を拭きながら、サンジ君は聞いてくる。そんな事を気にしなくて良いのに。いつもサンジ君は紅茶やコーヒー、ココア、カフェオレ、色々あったかい飲み物を持って来てくれる。それが心を温めて身体を芯から癒してくれていた。
「ううん。気にしないで。私大丈夫だから。だから……」
"もう、来なくて良いんだよ"
「………」
口を開けたまま、固まっている。
次の言葉が
出てこなかった。