第7章 サンジ君(DNH企画)
待っている。まだ来ない。でも振り返って確認なんかしたくない。卑しいって思われたら嫌だもん。だんだんと自分が気落ちしていくのが分かった。
すると、ゆっくり革靴を鳴らしながら、甘い香りが近づいてくる。
自分の顔が、じわりと口を緩めていることに気がつく。サンジ君に期待している事が見つからないように、口もとに力を込めた。
「花奏ちゃん、お待たせ」
サンジ君が私の横に座って、ハイと言って渡してくる。ふわりと優しげな瞳を浮かべている。
「!!……あ、ありがとう」
毎回毎回、この笑顔にいつもやられてしまう。つい文句を言う口が閉じてしまう。本を隣に置き、デザートがのった皿を受け取った。
今日のデザートはクリームチーズタルト。
そして、香ばしい香りが漂うキャラメルマキアート。
「美味しいそ〜〜!ありがとう!サンジ君」
目を爛々と輝かせた。今日はサンジ君が作る料理の中で、特に一番大好きなデザート。フォークを使って、一口入れる。すると、ふにゃりと表情が緩まっていく。
「ん〜〜! 美味しい〜!甘い〜!」
口に入れるたびに、とろける甘さと食感を堪能して口を動かしていれば、ふと、視線を感じて隣りを見てみる。
サンジ君が目を細め、
口端を少し上げて、
私が食べる様子をじぃっと眺めていた。